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非常に古い文書ですが、当時の川崎の保育事情及び児童福祉審議会の姿勢を示すものとして貴重な資料であるとのことで提供いただきましたので、掲載します。なお、資料中には、委員が掲載されていませんので、末尾に掲載しました。(HPスタッフ)
保育問題に対応する基本的な方策について
(答 申)
昭和52年7月14日 川崎市児童福祉審議会
川崎市長
伊 藤 三 郎 殿
川崎市児童福祉審議会
委員長 田中利三
保育問題に対応する基本的な方策について(答申)
昭和51年9月2日諸問のあった保育問題に対応する基本的な方策について、別紙のとおり答申します。
はじめに
川崎市は、若い世代の町である。若者たちは、この町に集い、働き、家庭をもち、何人かの子どもを生み育てる。
したがって、川崎市は、子どもの町でもある。現在、川崎市では、就学前の子どもだけでも、約113,000人の
数にのぼる。
従来、乳幼児の保育は、家庭の役割とされ、そのことは誰も疑う予知のないものであった。
しかし、今日、核家族化や母親の家庭外就労も含む生活様式、生活環境の変化などにより、家庭での保育だけを頼
みにしていられない現実が、すでに広範に生じている。
私たちは、家庭の役割を評価し、その育児機能の強化に努めなければならないと考える。これとあわせて、集団保
育・就学前教育を含めた乳幼児保育の社会的サポートが不可欠の条件でもあると考える。
集団保育の場としては、公私立幼稚園があり、4歳ないし5歳(まれに3歳)を中心に、川崎市では、約31,0
00人の子どもが保育されている。
さらに、こうした一般的ルートに乗りがたい子どもたちーそれは、保護者、得に、母親が就労していたり、又は疾
病にかかっているために、家庭での保育が満たされない子どもたちのために保育所がある。しないには、公私立あわ
せて89ヵ所、7,970人の定員が確保されている。
これらの保育所に入所している子どもたちの80.3%は、母親の居宅外労働、13.4%は居宅内労働と、その
大部分が母親の就労に起因している。<このことは、現実問題として家事・育児と労働とのつなわたり的生活を余儀
なくされている働く母親にとって、大きな支えとなっており、婦人の社会的進出を可能にさせる条件ともなっている
。>
川崎市においては、市制の重要な施策として、昭和46年「保育所整備5ヵ年計画」を策定し、人口1万人に1ヵ
所を目指して、以後、毎年、新設5ヶ所、増改築各1ヵ所の施設の増設をはかり、この10年巻(41年〜51年)
に、45施設、3,946人の定員増を行った。これについては、関係者の努力と市民の支援に敬意を表するもので
ある。
しかし、その結果、市の財政に大きな負担を生じたことは見逃せない。今日、1施設の新設に費やす費用は、12
0名規模で、用地購入、建設費ともで、約2億5千万円を要し、うち国庫補助は、約15%にすぎない。また、運営
費については、約36億円、うち市が、長時間保育、乳幼児保育等、保育内容充実のため加算しているのが、約20
億、国の示す保育料を軽減するための肩代りが6億円にのぼるなど、計約26臆円というぼう大な市費負担を余儀な
くされている。このような市独自の持ち出しにもかかわらず、まだ乳幼児の福祉の対応として、不十分な点が残され
ている。
一方で、母親の就労は、増加の傾向にあり、それに伴って保育需要も増大し、施設を増加すればするほど需要を生
み出すという事態が生じている。<また、母親の就労以外に、子捨て、子殺しにみられる家庭破壊、あるいは不良住
宅地区にみられるような環境悪化などはの対応は、保育所サービスとして、ほとんど考えられていない。>施設の増
設、保育内容の充実を望む住民の声の高まりは、今後も続いていくであろう。
これらに対して、行政がどのように対応すべきか、その基本的な方策をあきらかにすることが、本答申の目的であ
る。
私たちは、そのため「T 保育行政の基本的あり方について」を検討し、得に、家庭保育との関連において、保育
所保育の特質を検討した。次に「U 川崎市における保育所の現状」を詳細に分析し、その特徴と問題点をあきらか
にした。さらに、「V 当面する課題に対する方策について」で、今後の保育所の施設計画のあり方、保育の多様化
への対応のしかた、措置基準の適用および運用、保育に要する国・市、保護者の費用負担、家庭保育福祉員、無認可
保育所など法定外の施策について、若干の分析と提言を行った。
<これらは、今日、社会の変動とともに、厳しく揺れ動いている複雑で困難な保育問題のほとんどの領域にかかわ
るものであり、あきらかに、本審議会の地からを超えたものがあると言わざるを得ない。>にもかかわらず、私たち
は、「川崎市は、子どもを大切にする町」であることに視点を据え、行財政の限界を十分に配慮しながらも可能な範
囲の手厚い乳幼児処遇の道を探索する努力をつづけてきたつもりである。
私たちは、川崎市が、これまで保育施策に尽れた熱意に感謝するとともに、今後お乳幼児をかかえる市民生活の実
態をよく把握する努力を一層強め、多様な保育サービスの研究開発に十分意を尽しつつ、乳幼児福祉を増進し、地方
自治の本旨を貫かれてきたが、これからは、「地域の子どもは、地域の手で」という、市民の参加と協働の活発化を
期待するものである。保育問題は、市民参加のもっとも可能で有効な領域だからである。
T 保育行政の基本的あり方について
(基本的な考え方)
1. 近年とみに、川崎市においても、乳幼児の生活をめぐるさまざまな困難な問題が生じてきている。一般的にい
えば、核家族化が進行し、若い世代の家族が増加し、共働きもほとんど状態化していると思われ、また住宅事情
や家庭をとりまく諸環境の悪化など、総じて児童かつ基盤が著しく不安定化し、児童の健全な成長をはばむ要因
となっている。
2. ところで、児童憲章も宣言しているように「児童は人として尊ばれ」「社会の一員として重んじられ」なけれ
ばならないことは、現代における共通の認識である。自動はどのような環境におかれてもひとしくその生活が保
証され、健全に育成されねばならず、その社会的保障を要求することは、児童一人一人の権利である。その意味
は、一人一人の児童が、仲間同士のふれあいを通じ、成長発達していくことをめざして、あらゆる環境を社会の
責任において整備していくことであろう。
3. このような考えに立って、児童の育成をはかるには、児童の生活の場としての、保育所保育と家庭保育のあり
方が正しく位置づけられなければならない。保育所保育は、むろん、家庭がその乳幼児に対して常に行っている
営み、つまりその養護的機能を、最も重要な営みとして含んでいるが、そのことをもって家庭保育を代行してい
るわけではない。養護的営みをつつみつつ、乳幼児の保育所での生活全体を貫いて、保育所は確固とした、それ
自体の目的をもつものであり、それを集団保育とよぶことができるであろう。
4. 保育所は家庭保育と相互補完的に、児童に個別的、集団的な育ちの場を提供することにより、意図的、教育的
働きかけを通し、その健全な発達を保障する施設である。
5. このような考え方の上に行政の役割を考えると、家庭保育と保育所保育の均衡がとれ、かつ一人一人の乳幼児
が年齢段階や発達段階に応じて、それらにふさわしい保育をうけられるよう、総合的な施策を展開することであ
ろう。そのためにも、1で述べたような、都市状況のもとで仮定と乳幼児の実態を正しく把握し、実質的な家庭
福祉対策が講ぜられるよう努めなければならない。なお、保育所や幼稚園での社会化された保育が、結果として
家庭保育を援護しており、家庭福祉対策の視点からも、きわめて重要な、具体的施策である側面が忘れられては
ならない。
6. きわめて多面的な問題を含んでいるけれども、保育所と幼稚園の協働と連携にむけての一歩をふみだすこと、
それを含む乳幼児保育のあり方に対する市民の自由な参加を促進するために、行政としての可能な方法を模索す
ることなどは、重要な課題であると思われる。
(現在の主要な課題)
7. 川崎市における保育所は、「整備計画」に基づいて都市に例をみぬほど公立公営方式で拡充されてきた。この
行政努力は高く評価される。しかし、そのために生じてきた幾つかの問題を見落とすわけにはいかない。
8. 第1に「整備計画」に基づく保育所増設を終了してみても、待機児童は一向に減少しないという現実がある。
このような恒常的に存在する保育需要は、前にもふれたように、婦人労働の増加や家庭の育児機能の低下など多
面的な需要のからみから生じている。
9. 第2に、このような「すべての児童が保育に欠ける」ともいうべき状況に、保育所のみで解決しようとする従
来の方式で対応できるのだろうかという疑問である。
10. 第3に、川崎市の保育サービスは、行政的には児童福祉法の負担原則とは逆に、国が2割、市が8割という
現状である。この超過負担問題は、市の保育サービス拡充を圧迫しており、その解消を国へ強く迫らねばなら
ない。
11. 結果的には、川崎市の保育行政は、もはや機関委任事務としての保育行政の城を出て、市の重要な乳幼児福
祉施策に転換していることは明らかである。
12. 第4に、人的資源の問題がある。今後の保育サービスの充実向上のためには、保育者の養成・確保と研修が
不可欠の条件であり、確実な展望をもたねばならない。
13. 第5に,市民や民間福祉関係者のエネルギーが十分に活用され、公的保育事業と良い意味での協働関係が保
たれるよう方策がとられねばならない。
14. 第6に、これまでの保育所が、婦人の就労や地域社会の人々の生活に、どのような影響を与えてきているの
かが、具体的かつ詳細に把握されていないということである。
保育行政を的確に進めていくためには、調査その他の方法をもって、これらを彰かにしていく必要がある。
U 川崎市における保育所の現況
15. このような課題をかかえながらも、川崎市の保育所は、その施設数および保育内容において著しい前進をみ
た。
(保育所定員の推移)
16. 川崎市の保育所定員は、昭和51年度末で7,540人(86施設)である。昭和52年度末には定員8,
990人(99施設)となる見込みである。
17. この10年間に定員は2.5倍、学令前人口に保育所定員が占める割合は3%から6%になっている。(図
1および図2)
18. これらは「整備計画」が忠実に実行されてきたことを示し、まもなく1万人に1ヵ所の保育所建設計画が完
達されることは確実である。
19. 公立公営保育所のみで比較するならば、大都市の中ではもっとも多く、公立公営による定員の急増が図られ
てきたというのが川崎市の著しい特色である。
20. したがって、川崎市では民間保育所定員は公立定員の4分の1以下であり、ほとんどの大都市で民間定員が
公立定員を上回っている状況とは大きな差異がある。
(保育需要)
21. 保育所入所申請数は年々増嵩してきている。市総人口に対するその比率は、この10年間で0.22%から
0.52%と2.4倍になった。(付表2)
22. 保育所定員と入所申請数は、比率からすると同じような伸び方をしているが、絶対数のうえで定員不足は年
々その数を増してきている。
23. 入所申請を年齢別にみると、4・5歳児は20.3%、1・2歳児は43%を占め、1・2歳児の申請が多
い。しかし受入れ可能な数は、4・5歳児が39.2%、1・2歳児が38.0%であり、申請状況と受入れ
可能な数との間にずれがある。(付表3)
24. 年度当初の保育所措置が終了した時点で、約3,000人の入所申請がそのまま残されている状況である。
このうちの4・5歳児の多くは幼稚園に入園していくものと思われるが、状況は把握されていない。(図3)
25. 4・5歳児では80.5%が幼稚園に、8.9%が保育所に通っている。4.5歳児の集団教育について私
立幼稚園はきわめて大きな役割をになっている。(付表4)
(保育所職員)
26. 公立保育所の職員定数は、51年度末で1,226名、民間保育所198名、川崎市では1,424名の職
員が日々の保育にたずさわっていることになる。(付表5)
27. 保育所職員は、園長、ほぼ、看護婦、栄養士、賄人、用務員が児童の定員に応じて配置されている。(付表
6) そして公立保育所のこれらの職員はすべて女性である。
28. 市では、国のほぼ配置基準に加えて、0歳児保育については3:1(国6:1)の配置を、また各園に予備
ほぼ1名、さらに充実保母として保母4名につき1名宛の常勤保母の配置をしている、(国、児童定員60名
以下常勤1名、61名以上非常勤1名)。(付表7) そして、乳児では週1回、幼児では月1回の定期健康
診査を行う嘱託医がこれに加わる。
29. したがって、市単独でかなりの職員配置が行われており、これらは保育内容の充実と労働条件の改善に役立
っている。
30. しかし、保育内容の点検および父母との関係も含めた相互の意思疎通などにつき、日常的な検討や助言指導
が、自主的な研究や集団研修と十分結びあっていない。このため、職員が日々の保育を前進させられぬ悩みも
山積しているようである。
(施設の規模と構造)
31. 保育所1ヵ所当りの児童定員は、公立で最小35人から最大240人まであり、もっとも多いのが120名
定員21ヵ所である。(付表8) 新設および増改築100〜120名前後の定員を目標として行われている
ので、多くがこの程度の規模になっていくと思われる。
32. 経験的には、定員60名前後の規模がひとりひとりの子どもたちに目を届けやすいものであるといわれてい
るが、用地取得の難しさの仲で定員増をはかるために前項のような措置がとられている。
33. 施設は厚生省令の児童福祉施設最低基準によるか、これをやや上回わるものが建てられている。園庭はこの
基準よりもかなり広くなっている。園舎は鉄筋2階建が普通である。
34. この最低基準は、乳児保育に庭を認めていないといったこともさりながら、児童の成育環境の悪化した都市
では、それだけさらに豊かな園庭、園舎が必要であり、現実には密集地での用地取得が困難であるなど、この
最低基準と国の支出単価のあり方は都市において著しい問題が多い。
(地域社会との結びつき)
35. 南北に細長い川崎市は、地域特性が著しく異なり、保育所定員と入所申請の状況が異なっている。しかも職
員数、施設数とも全市的な把握あるいは相互の意思疎通を行うには大きすぎるという状況であるが、地域の特
性に応じた保育を推進しうるような行政組織になっていない。
36. 一方、園長は100名前後の児童と20名前後の職員について、きわめて繁雑な仕事を遂行しており、職員
も日々保育にかなり多忙であるが、それにもかかわらず、優れた文集づくりや保護者との交流などが促進され
てきている。
37. しかし、地域社会の人々、保護者のためのスペースは保育所に用意されていない。また逆に、地域にある公
園その他の施設が十分に活用されず、園内保育が重視されすぎている感もある。園を外に向けていらきうるス
ペースを整えるとともに園外の施設の活用がさらに工夫されてよいであろう。
38. これからの保育には、保育者そしてまた多くの地域社会の人々のさらに積極的な参加を要するが、これらに
ついて今後とも促進されることが望まれる。
V 当面する課題に対する方策について
1 保育所の施設計画について
(保育需要の把握)
39. 婦人就労、集団保育などが一般化してきたこと、そして、児童の養育が家族との社会的施策の双方によって
になわれることの好ましさが明らかになるにつれ、保育サービスに対する需要は著しく高まり、今後もその傾
向はつづくものと思われる。
40. このため、今後の計画策定にあたっては、まず乳幼児とその家庭の実態や保育所整備にかかわる基礎資料、
たとえば乳幼児の人口動態との関連での地域別、年齢別の需要予測等とともに保育サービス供給に関する人的
物的資源の点検が必要である。
41. とりわけ、そこでは乳幼児の養護にかかわる需要がいかなるものであるかを明らかにする必要がある。この
養護の内容は、乳幼児の生活環境、保護者の就労、その他の家庭状況、子ども自身の発達の状況などによって
個々に異なるので個別的に詳細な検討をする必要がある。
(保育施設の整備)
42. 毎年取り残される入所申請数、あるいはまた、他都市との比較を考えるとき、今後とも保育所の増設が必要
である。
43. しかし、保育所の設置運営をみると、人的資源、用地取得、財源など多くの問題が山積している状況である。
44. 一方で保育所の新増設および機能の拡充という単一の側面から乳幼児の福祉にアプローチするのみでは,多
くの問題が解消されず、また保育所のみが過大な問題を背負うことになろう。
45. つまり、これまdのような計画を単に延長することは、現在の主要な課題(Tの7〜14)で述べたような
問題に有効な解決策とならなくなってきていると思われる。
46. この意味で、市としても長期的には、保育行政を単に国の機関委任事務の拡充としてのみとらえるのではな
く、独自の乳幼児福祉行政の課題としてとらえ、その中で多様な保育サービスを構想し、開発する方向を考え
ねばならないであろう。
47. 保育をめぐる問題は、ひとり行政内部で解消できる課題ではなく、又両親や保育に関する専門家のみの問題
でもなく地域社会の問題としてとらえなおされる必要がある。
48. 用地取得。、すぐれた人的資源の確保などに長期的な行政努力が重ねられる必要があり、これらに対し、今
や市民の積極的な支援と酸化を必要とする段階に至っていることを得に指摘したい。
49. とりわけ、保育所整備に加えて、保育所職員の質的向上もみられるが、集団保育そのものの歴史の浅さや、
急激な保育所拡充による新任職員の増大などがあるため、今後については、保育に対する取り組みという点で
、理論的にも実践的にも十分な研修が図られるべきである。
(民間保育所の育成)
50. 民間保育所は、地域との密着性、柔軟性などにおいてすぐれ、今後、保育サービスの展開にあたって、行政
のすぐれたパートナーとしてある。その多様な保育観と保育内容をもった民間保育所の役割は、地域に根づい
た保育サービスを展開する上で一層必要とされよう。
51. さらに、社会資源の活用について一層の創意と工夫がなされてしかるべきである。市中の公園、企業の有す
る緑地その他が、これまでの保育所にこだわらず利用されうるし、乳幼児の福祉について市民の参加が促進さ
れるならば、さらに多くの資源を発見できるであろう。
52. これには、青少年会館、子供文化センター、公園等の利用による、親が参加する自由な保育形態とか、いわ
ゆる自主保育への市の責任による巡回保育など市民の主体的な活動を支援する試みもなされてよい。
2 保育多様化への対応について
(長時間保育)
53. 川崎市の保育所の開園時間は、10時間半に及ぶ。これは、特例保育と称される朝・夕それぞれ1時間の保
育時間延長によるもので、措置児の30%が、これを利用している。
54. この長時間保育は、母親の就労を保障するために、保育者の労働条件など難しい面が多いにもかかわらず、
よく要請に応えて実施されている。最近では、北部で長時間保育への要請が多くなり、南部の状況と対照的に
なってきている。
55. 乳幼児に対する適切な保育時間については、さまざまな見解がある。<一般的に言って、保育が長い場合に
は、子どもの心身の疲労を緩和するための十分な配慮が必要である。>
56. したがって、長時間保育は保護者と保育者が密接に協力しあうなかで、一人一人の子どもに対する保育時間
との内容が慎重に決められるべきである。
(障害児保育)
57. 障害児の保育は、昭和51年度より促進され、現在、44施設91人が入所している。
58. これは、昭和49年3月に行われた川崎市児童福祉審議会の意見具申に沿っての第一歩であると同じに、<
市民運動に応えた保育関係者の努力の結果である。>
59. しかし、現状はいまだ施行錯誤の段階であり、より多くの経験が積み重ねられていかねばならない。そして、
さらに積極的な措置を行いうるよう、保育者の研修が必要であるし、保育の場をひらかれたものとし、各種の
専門家が協働しうるような条件が築かれていく必要がある。
(産休明け保育)
60. 現在の出産休暇の状況からすると、<産休明け保育は、当然の要請としてある。>川崎市では、これに対し
おおむね生後5ヵ月から実施しているが、それは、保育所の相当な努力によっていると評価してよい。
61. にもかかわらず、産休明け保育をより早期に、という要請への対応には十分と言えず、これについて、保育
者、両親、子どもの立場から調査検討して,実態をよく把握しつつ、試行的に新しい方策が考えられてしか
るべきであろう。
62. なお、産休明け保育には、基本的な課題がある。それは、両親が自ら子どもを育てることについての主体的
な選択の可能性を高めるようにすることである。このために育児休業法の適用対象拡大、労働基準法のかし遵
守あるいは改正など、国の労働政策への働きかけを必要とする。
63. 一方、乳幼児福祉を重点施策として揚げている市においても、企業・事業所等に対して育児時間の確保、そ
の他の労働条件への配慮について、協力と要請の努力をたかめるべきである。
(育児保育)
64. 軽い疾病時ならば、子どもの保育をしてほしいという要請がある。保育者からすると、医療との連携が確保
されていない状況での病児保育には、大きな不安と危慎の念を抱かざるを得ない。
65. 病児保育が可能になるのは、地域の医療機関から密接な支援を受けられるという条件がみたされる必要があ
ろう。これは、病児保育に限らず、今後の保育には促進されてしかるべきことであり、医療関係者との協議、
そして保育所の診療所併設の可能性などが接られていってよいであろう。
3 措置基準について
(措置基準をめぐる問題)
66. 保育所入所措置は、昭和36年の厚生省児童家庭局長通知「児童福祉法による保育所への入所の措置基準に
ついて」に基いて行われている。
67. 保育ニーズの拡大にともない、国基準そのものの改正が必要とされるが、当面、措置過程での選考・決定の
手続をめぐって、利用者に大きな不満が生じていることが問題である。
68. 入所希望者が全員入所できる条件がない状況の中で、その抜本的解決は施設定員の大巾な増加その他によっ
てなされる以外にはないという制約をうけながらも、やはり受理・選考・決定の過程では、慎重で配慮のゆき
届いた措置が講ぜられなければならない。
(福祉事務所での措置基準運用の現状)
69. 厚生省基準をさらにつめた現業での「基準」(優先順位)は、地域の特性を反映するなどの事情から、福祉
事務所ごとの裁量にゆだねられている。
70. 「点数化」は、これまでも試みられてきたが、実に、ニーズのある世帯が入所できないような事態をももた
らし、さらに事務量の増加を招くなど、大変困難のようである。63.にも関係するが、市全体の統一的基準
の策定は、それ以上に困難であろう。
71. 結局は、選考会でのケース・バイ・ケース方式にゆだねられることになる。むろんその場合、具体的な判断
が伴うわけであるが、70.とも関連して、その方が実態を把握しやすい点がある。
72. 環境条件等による入所についても、厚生省基準(7)項(特例による場合)活用が考えられるが、現実とし
ては少ない。
73. 結局のところ、措置の基準そのものが、定員によって左右されることになる。年令別保育が行われているの
で、それによっても格差が生じる。
74. 年度中途の緊急なケース等は、状況によって異なるが、入所困難なことが多い。
(利用者側からみた措置について)
75. このような措置の状況に対して、利用者の側に、さまざまの不満がある。その主なものを例示すれば、
@ 運用上措置基準の拡大をはかって欲しい。住宅事情、その他の環境要件によって保育に欠ける場合が除外さ
れがちである。
A 兄弟が同じ保育所に入れない事態が生じることもあり、時間的、経費的な負担が多くなるなどの不満が強。
B 保育所に入所できない結果として、対象からはずれた側に大きな不満が残る。選考基準、経過、結果につい
て、公開等を望む声も多い。
C 福祉事務所は、保育の問題の窓口であり、その業務処理について、もっと親切に説明して欲しいなどの要望
と期待が寄せられる。
(一般的な提言)
76. 上述したように、措置基準の運用そのものが、地域のニーズと施設定員状況に左右されるため、その改善に
は多くの制約がある。従ってここでは、極めて一般的な提言にとどめざるをえない。
77. 画一的な「点数化」は困難にしても、事実、措置の過程で採用している判断(指標)をある過程標準化し、
それを市民に提示できるのではなかろうか。
78. 入所については、入所定員等申込みにかかわる事項をわかりやすく、多くの市民に徹底できるよう、方法を
構ずべきである。なお、すべての申請が受理されなければならない。
79. 入所できない理由や、入所予定順位の公開を望む声は強い。運営に関する市民参加をも含めて、可能な方法
を検討すべきである。
80. 緊急措置のための定員を確保すべきである。
4 保育にようする費用負担について
(民生費と保育所関係費)
81. 川崎市では、保育所運営費、施設費の両面で年々大きな財政負担を余儀なくされてきた。
一般会計予算に占める民生費の比率は、昭和51年度で13.7%であり、年々その比率は高まっている
(付表9)
82. 建設費も含めた保育事業費は、51年度予算で約43億6,200万円。市民ひとり当りの金額として単純
に割出すと4,298円となる。これを担税者数で除すると相当な負担額になるといえよう。(付表9)
83. 保育事業費が児童福祉費に占める割合は、50年度決算額で63%を占め、残りの児童福祉費は乳児院等の
措置費など、固定的義務経費であるので、川崎市は児童福祉サービスの固定経費以外のほとんど全てを保育所
設置畝いにあてているといってもよい状況である。
84. この保育所運営費を措置児ひとり当り月額になおしてみると、47,923円を要していることになる。こ
の経費の主なものは人件費であり、公私立平均67.6%を占めている。
(超過負担)
85. 川崎市における50年度保育運営費は焼く35億9,600万円であるが、そのうち国の最低基準に基く措
置費は約15億8,400万円であり、要した費用の44%を占めるにすぎない。一方、市が最低基準の向上
のため単独加算している部分は約20億1,300万円で全運営費の56%に達している。(付表10)
86. 保育所建設に要する用地取得費については、国は補助対象としていないため、大都市における財政負担は非
常に大きなものとなる。川崎市では、昭和50年度親切5ヵ所分について約5億5,000万円の支出をして
いる。又、建設費については約6億3,000万円のうち国の負担は約1億8,000万円、28.1%にし
かすぎない。
87. これら、いわゆる超過負担については、国と自治体との間で見解の対立があるが、いずれにしてもこの改善
が行われぬ限り、保育所の設置運営を自治体がなし得ぬという限界が真近かに到来するであろう。
(保育所利用者の費用負担)
88. 川崎市は、昭和44年度に保護者から微収する保育料を改訂して以来保育料を据え置いてきた。こうしたな
かで、保育所運営費に閉める保育料収入は、昭和44年度の13.3%から50年度の5.8%まで下降して
きている。(付表11)
89. 国の微収基準に比較して、川崎市の保育料は相当低額であるため、いわゆる市の肩代わり軽減部分は、昭和
50年度において約5億7,800万円となる。
90. 9大都市の保育料徴収金額を比較してみると、川崎市はもっとも安く、D階層では3分の1から5分の1の
金額である。
91. 各階層別に標準4人世帯(夫婦に9歳と4歳の子ども)について年収額を試算し、この月額に保育料の占め
る割合をみるとC階層で0.64%〜0.77%、D階層で1.15%〜1.7%である。(付表12)
92. 現在川崎市で措置されている児童の階層は、夫婦とも常勤の給与所有者であれば、ほとんどD8階層に入る
と思われ、この18.3%を除く80%以上お人々がパート、内職、自営であろうと推測される。
(付表12)
93. こうしたことからすると、保育料の算定根拠および保育単価については、長期的な視点から是正すべき点が
多い。しかし、とりあえず現行の保育料金をどうするか、現時点では合理的な根拠を見出し得ないが、他都市
の例などをひとつの事態的な指標あるいは参考として改訂を考えることになろう。
94. ただし、この場合でも家計収入におかえる保育費の占める割合、あるいは2子以上保育所(無認可を含む)
に入所している場合の負担など、収入に対する負担公平を欠くことのないよう十分な配慮を必要とする。
95. また、あらたな保育料収入は、一層ゆたかな保育のために支出されるべきである。
5 法定外の制度に対する施策について
(現状)
96. わが国の保育施設は、福祉系統の保育所と教育系統の幼稚園とから成立っているが、さらに、そのいずれに
も属さない第3の保育施設といわれるべきものがある。
97. これらの施設は、認可の基準に達していないか、認可施設としての制約を受けることを望まない、などの理
由により、認可を受けていないところから、一括して無認可施設とよばれている。
98. こららは、現在の保育施設の不足を補完するものとして、あるいは、それらが架しえない部面を受持つ開拓
的なものとして、その存在の意味が評価されるようになった。
99. さらい、保育の機会均等、処遇の平等という立場から、こららの施設への公的補助・指導が意図的になされ
るようになり、単純に無認可施設としてかたづけるのではなく、総合的な保育制度体系の一環としての考察が
払われるようになりつつある。
(種類・性格など)
100.無認可施設といっても、その成立、規模、運営の形態は、全く多種多様である。大まかにいって、次の3つ
に分類できる。
@ 事業所内保育所
事業所が、従業員の確保、福利のために、事業所内に設置するもの。事業所の負担と責任においてなされる
が、昭和49年、厚生省が、事業所内保育施設指導実施要綱を設定し、その指導と助成の道に若干の配慮を示
すようになった。労働力確保が当面の要因であるから、その需給状況に応じて、拡大又は縮小され、児童福祉
の面は、二次的にされがちである。
A 地域保育所
親たち、地域の協力者たちが相寄って、それぞれの保育ニーズをみたすために、個人又は団体が自主的に設
置し、運営しているもの。共同保育、幼児グループなどといわれる創造的な役割をもつものから、営利的色彩
の濃いものまで、多様である。
一般に、乳児保育、長時間保育、障害児保育など、認可保育所の対応の不十分な部面の補完をしており、保
育所のせまい門から阻まれた親たちにとって、かけがえのない資源となっている。しかし、その物的条件は、
概して、認可保育所にくらべ、著しく低位にあり、保護者の負担額は高く、従事者の処遇は低い。
昭和50年、行政管理庁は、「幼児の保育及び教育に関する行政監察結果に基く勧告」の中で無認可保育所
にふれ、認可保育所の充実、小規模保育所の定員下限引下等により、その解消につとめるよう勧告を行った。
無認可保育所に対する地方自治体の助成は、厚薄の差はあるが、一般化しつつあり、昭和51年、神奈川県
児童福祉審議会も答申している。
B 家庭保育福祉員
地域保育所と類似しているが、個人が自宅の一部を使用して、ごく少数の子どもを受託しているもの、その
大部分が乳児である。地方自治体が介在し、一定の条件のもとに、紹介、援助、指導しているものである。
101. 川崎市における実態は、次のとおりである。
@ 事業所内保育所 施設数17 児童数379
A 地域保育所 施設数17 児童数649 職員数66
B 家庭保育福祉員 人数 23 児童数 40
(付表13)
(将来の施策)
102. これらの法定外の施設は、現在の保育施設の補足としてのみでなく、保育ニーズの変化に対応する新しい
要素の導入とも考えられる。したがって、これらを認可の枠外の無認可としてみるべきでなく、これらをひ
っくるめて、総合的な体系の中に位置づけるべきである。
得にその特質と考えられるのは、次の点である。
長所としては 小規模、家庭的ふんいきが生かされる。
柔軟性、弾力性にとむ。
住民の創意、参加が導入できる。
短所としては 場の確保、人の確保、財源の確保に制約され、保育内容の充実が難しかったり、経
営者の恣意性に流れやすい。
103. 既存の法規と命令に基づいて為される行政が、法定外のものにどのように関与するかは、難しい問題であ
り、限度があることはやむを得ない。
その手がかりの1つは、児童福祉法第24条、但書「その他の適切な保護を加えなければならない」に適
用できる、かである。少くとも、認可施設の不足面を補てんしている面については、該当するといえよう。
しかしながら、バラマキ福祉に陥るおそれもある。認可、無認可を通して、総合的見地から配分を考慮す
べきであろう。
104. 以下、形態別にその対応策を考えたい。
@ 事業所内保育所
労働力確保という要因の限界からいっても、中小零細企業ではほとんど期待できないという点からいっても、
今後の拡充を望むことは無理である。ただし、病院など専門的職場の除し労働者が多数を占め、その勤務形態
が変則である事業所においては、特別の助成指導をすべきである。
A 無認可保育所
小規模保育所制度の活用によりこれを認可施設たらしめるよう指導助成をはかることが第1である。さらに、
その目的、運営、処遇の面を総合的に評価し、適正と思われる施設に対しては、育成の意味をふくめ、措置に
準じた扱いをし、処遇の平等をはかるべく相応の助成指導をすべきである。それとともに、助成指導を受ける
施設は、それなりに責任体制の強化が要求されなければならない。
B 家庭保育福祉員
家庭的処遇は、認可施設の持ちえない長所であるが、家庭内職的な恣意におちいりやすい短所があることも
留意しなければならない。
乳幼児の福祉が保障される条件を整備したものにのみ措置に準じたあつかいをし、処遇の平等をはかるため、
助成・指導を講ずるべきである。
家庭保育福祉員には、訪問保健婦または保母による巡回指導を行うべきである。
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