#11 小さな一人旅

黄金週間。
この間、休暇ではない人も世の中にはたくさんいるが、私は製造業に従事しているので、基本的に連休である。
だが、夫は休日出勤しなければならないというので、私が夫の住処に滞在することにした。
夫が働いている間、群馬のワインディングで修行を積もうという計画である。
「赤城の方にね、いいところがたくさんあるんですよ。」
管理課長もイチオシの峠、私も走ってみたいと思っていた。

夫を送り出した後、榛名山を目指して出発する。
榛名湖を眺めて、おにぎりでも食べて、のんびりしよう、と気楽に構えていた。
…地図でわかりやすそうな県道を結んで作ったルートだったが、なんでこんなに迷う〜?

1時間ほどさまよった後、このまま行けば、とりあえず榛名山には着くだろう、という程度に復帰した。
榛東村のGSで、所長らしき人がガスを入れながら、今、箕郷で、芝桜祭をやってますよ、と教えてくれた。
榛名山に行く道は二通りあって、片方がこのお祭りの会場を通るのだという。

辿り着いた芝桜の公園は、自衛隊の駐屯地の人達が工事したらしい。
入場券売り場では、ちょっと年配の方たちが集まっていた。
一緒に入場券を買って、団体割引にしませんか?と誘われたので、遠慮なく参加した。

芝桜満開

地元の人たちが出している露店で、織姫饅頭、というのを食べた。
「しそ」というのを選んだら、紫蘇入りの大きな蒸しパンで、とってもおいしい!

受付のこれまた年配のおじさんたちに、ヘルメットとリュックを預けてトイレを借りた。
「どこから来たの?」
「ひとりかい?彼氏と来なきゃ。」
「800CCだって!僕達全員乗せられるんじゃないか?」
「榛名山へ行くのかい?バイクなら15分だね。」
とてもフレンドリーな人たちだ。

受付のおじさんたちに教えてもらった通りに、榛名山に向かって走り出した。
登山口のようなものがあるのかと思ったが、道は徐々に、ある意味前触れもなく、登山道?になってしまった。
前を走る乗用車について、県道28号線(高崎榛名吾妻線)をゆっくりと登って行く。
ゆっくり過ぎると、エンストしそうで怖いが、「低速でこそ技術が必要」という誰かの言葉を思い出して、これも練習、と真剣にゆっくり走る。
…のはいいのだが、前を行く乗用車は、トロいバイクに、煽られていると思ったらしい。
そんなつもりは全くないのだが。
道を譲ってくれたので、覚悟を決め、速度を上げて駆け登った。

登りきった所で、本来のルートを行くのなら、左折しなければならなかった。
が、物事には勢いというか、流れというか、不可抗力というか、そういうものがある。
私はなぜか、何の迷いもなく、伊香保に下る道に突っ込んでいった。
予定を変更する、という思考過程は全くなかった。
これは、要するに、無我夢中、ってことだろうか?
暦の上では単なる金曜日、温泉街は、ゆったりとレトロな時間が流れているかのようだった。
そんな中を、軽快に、というよりはあたふたおろおろと、Monster 800S i.e.で駆け抜けていく。

伊香保からの帰路も、ちまちまと道に迷いまくった。
ようやく、自分の現在位置がわかる道路に出たので、インター近くのドーナツショップで休憩することにした。
店でもらったスクラッチカードを、小さな男の子を連れたママにあげた。
窓辺の席でコーヒーをすすっていると、ガラスをコンコン、と叩いて、さっきの男の子とママが挨拶してくれた。
ドーナツ片手に地図をよーく見ると、どうも私は榛名山登頂を果たした訳ではないようだった。
山頂はもっと西の方で、そこには神社があるらしかった。
まあ、楽しかったからいいか。

帰り着いたのは意外に早く、旅と言うより、朝練に近かったようだ。
朝練で道に迷う人がいるのかどうか、よくわからないけど。

ひとりで走ると、無意識のうちに人恋しくなるのだろうか?
いろんな人とお話できちゃった、なんて思いながら、春の小さな一人旅を思い出している。

これも芝桜

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