#37 悩める二日間(二俣川とHMSで )

トラ車の軍団

「めいっぱい練習する月間」
9月は、できる限りたくさん練習しよう!と思っていた。
今は仕事がめちゃくちゃに忙しく、自分の時間がなかなか取れない時期。
だからこそ、多少体力的にムリしてでも、自分のための、練習する時間がたくさん欲しかったのだ。
そういうわけで、二俣川の安全運転講習会とレインボー埼玉のHMS、土日と続けて参加した。

その1 残暑厳しい二俣川
今回も一班に参加した。
やっぱり人数が多く、炎天下では、各課題の前で並んで待つのがつらいが、渋滞時に備えての体力訓練だと思ってガマンする。

前半は、急制動→狭路→目標制動と、急制動→発進・停止→8の字の順に課題を回る。

急制動では前のめりになり、上半身に力が入りすぎていることを指摘される。
ニーグリップが弱いからだ、と理由を説明してもらって納得するが、実行できない。
更に、リアブレーキの加減ができなくて、後輪をロックしてしまう。
「前ブレーキはもっと使えるよ。」
指摘されて、リアブレーキを使いすぎているのではなく、フロントブレーキを使いこなせていないのだと気がついた。

好きなんだか嫌いなんだか、自分でもよくわからない8の字、2速で回ろうとするとエンストしそう(もっと速く回れ、自分!)。
1速でカラダがガチガチになったまま、もたもたと回っていると、白バイ隊員に声をかけられる。
よくお見かけしますが、と言われて、前回の二俣川でクールなアドバイスをくれた人だと気が付いた。
ライン取りにムラがあってちゃんと外側を通っていないこと、バイクと身体がバラバラことなどを理路整然と指摘されてしまった。

後半は、オフセットスラローム→千鳥→パイロンスラローム。

オフセットスラロームでは、「直線でアクセルを開ける」、「パイロンは大きく入って小さく出る」という黄金のルール?があるのだが、私には守りきれない。
2速で回ろうとして失速、転倒しそこねていると、大きいFazerに乗った大きい指導員が現れて、一緒にMonster 800S i.e.のハンドルの切れ角を見てくれる。
「はい右。はい左。あまり切れないんだよね。あれ、そうでもないか?」
そうでもない、ってことは、やればできるようになるってことだ。
他の指導員からも、(性能の優れた)いいバイクなんだから、と言われて、ちょっと元気になる。
このバイクに、できないことがあるわけじゃない。
私がこのバイクの性能を引き出すライダーになればいいのだ。

といいつつ、千鳥はやっぱりできない。
ムリしないで、と言われて、そのままあきらめてしまう。
ZEPHYRの女性が一人、見事に通過していくのを見て、まためげる。
他人と比べても、意味はないのだけど。

パイロンスラローム、できると思ったのだけど、上半身に力が入りすぎて、上手くコントロールできない。
1本目のパイロンまで距離が短過ぎて2速に入れられないので、デリケートな1速の練習ということになるのだが、そのデリケートさが、私には不足している模様。

いいところがないまま、この日は終了となってしまった。
係の人から、来年の安全運転大会の紹介があり、出場して上位に入賞すれば、2ヶ月間、白バイ並みの訓練を受ける権利が得られることを話してくれる。
憧れの特練、いつか私もそんな風に、全力で練習させてもらえるようになりたい。
そうしたら、この愛するモンスターを、(少しは)自在に操れるようになるかもしれない。
でも今は、モンスターどころか、自分の身体も扱い切れていないのだった。
悲しくて、涙が出た。
その2 HMSバランスセカンド
嘆きの二俣川の翌日、レインボー埼玉のHMS「バランスセカンド」に参加した。
これはトライアル車での低速課題&トライアル入門のクラス。
軽くて、小回りもきくバイクに乗ってみれば、私自身の欠点がはっきりするのでは?と思っての参加だった。
…実際、はっきりした。
トライアル車の場合、オンロード車とは、曲がる時の身体の動かし方が少し違う。
腰を入れるのではなく、リーンアウトというか、腰を出すようなフォームになるのだ。
バイクを怖がらず、必要な身体の動かし方をすること…これができない。
まずはバイクになれるために、8の字で曲がる向きを変える練習をするのだが、最初は8の字すら描けなくて、とりあえず小さな円を描いて目を回してみたり。
なんとか8の字は回れるようになったが、体中にムダな力が入って、ガチガチになっているのがとてもよくわかった。
モンスターの時と同じく、上半身でバイクにしがみついている。
下半身に意識を持っていけない。
怖がると目線が泳ぐ。

その後は一本橋やスネーク一本橋、かまぼこ一本橋等々で低速のバランス練習を繰り返すが、最後まで渡りきれない。
要するに、低速でバランスを保ち続けられないのだった。

午後からのトライアル入門は、雨が降った為に、泥遊び状態となってしまった。
ここでも何か教訓を見いだすべきなのだが、泥遊び?が面白くて、つい、何も考えずに楽しんでしまった。
もちろん、クリーン(足つきやコースアウトなどの減点がないこと)なんてできなかったけど。

「ふだんは何に乗っているの?」
空き時間に、インストラクターが話しかけてくれる。
「Monster 800S i.e.です。Uターンや千鳥ができないので、練習しに来ました。」
「ここでUターンするのに足をついてしまったり、転倒しそうになったりするのが練習になる。きっと身に付いているよ。」
そう、この二日間に学んだことを、自分で整理して、しっかりと身に付くようにしなければ。
でも、それがまだできないような気がする。
インストラクターたちが、泥だらけのバイクを散水車できれいにするのをぼーっと眺めながら、暑さと雨に鍛えられた1日が終わっていった。

散水車で洗車

練習していると、自分の悪いところが見えてくる。
そして、それを直すのは自分。
今までに、いろいろな場で教わったことをちゃんと振り返って、自分で身につけたい。
そんなことを考えながら、夫の運転するクルマで、雨の中、帰路についた。
カーステレオからは、「オペラ座の怪人」のサントラが流れていた。
エミー・ロッサムが、私の気持ちそのままに「Think of me」を優しく歌っている。

私を想って
あなたに教えてもらったことを全て身に付けようと、ひとりで努力を続けている私を想って
一瞬でもいいから思い出して
上手くいかなくて、泣きながら走り続けている私を想って
共に過ごした時間は短く、もう二度と戻らない
それでもその時間を永遠の輝きに変えようとしている私を想って
(注:実際の歌詞とは大きく異なっている)

「何かあるはずや、コツとか、正しい身につけ方とか。二俣川やHMSは良心的やと思うで。でも、他にあるんや。特練では、それが伝授されているのに違いない。しかも無料で。それに参加できるレベルまでたどり着いて、やっと教えてもらえるんや、きっと。」
書き忘れていたが実は二日ともつきあってくれた夫が、突然力説する。
このアジ演説(というほどじゃないけど)で、ロマンチックな幻想は簡単に吹っ飛び、私は静かに現実的に、この二日間を振り返るのだった。

マスター オブ モンスターへの道は、まだまだ遠く険しい。

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