#41 HMS中級 〜得られるものは、variable〜

12月の桶川

いやらしいコース

よく晴れた12月半ばの土曜日、HMS中級に初参加した。
前回、初めて初級に参加したばかりなので、厚かましいような気もしたが、できることを繰り返す練習より、できないことに取り組む練習をしたかったのだ。
今回も借りたのはCB750。
法定教習を受けていた頃、最低でもこれぐらいは乗りこなして下さい、と女性指導員に言われたことが強く印象に残っていて、半ば強迫観念で選んでしまった。

車両点検、慣熟走行の後、急制動とオフセットスラロームでアクセルの具合やブレーキの利きをつかむ。
オフセットスラローム、最後の2本のパイロンは虎縞で、ここだけ他のパイロン達とは間隔が違っていた。
案の定、私は最後にリズムを崩し、この2本で身体のバランスを失いそうになる。

こんなんで大丈夫かな〜、と思いつつ、さっそくコース走行である。
この日は他のクラスとの場所取り?の都合で、中級はコース走行ばかりになってしまったのだという。
「ちょっといやらしいコースになってます。」
どういやらしいかと言うと、取りたいラインがちょうど取れないように、コース上にパイロンが置いてあるのだ。
スタートしてみると、バイクを誘導する難しさ以前に、コースが難しくて覚えられない!
初級の時には親切な案内人に見えた、倒れたパイロンが、並んだ生首に見えてきた(下から見た場合)。
何回か間違ったコースを走ってしまい、インストラクターに呼び止められた。
お二人はちょっとついて走って下さい、と言われ、もうひとりのコースオンチを見てみると、我が夫であった。
恥ずかしい夫婦である。
「中級は、初級のように、びっしりパイロンを置いていません。自分の進む先を、自分で見通して欲しいので、最小限のパイロンしか置かないんです。」
慰めてもらいながら、何とかコースを覚え、リスタート。
こんなコース、モンスターだったら頼まれても走れない、と思うような、細かい切り返しを続けるが、どうにか転倒だけはしない、という程度にしかできない。
結局、アナタちょっとこっち来なさい、と再度インストラクターに呼ばれ、タンデムでコースを走ってもらう。
「もっとアクセルのメリハリを付けましょう。開けるところでちゃんと開けた方が、小さく回れます。」
そしてインストラクターの後を追って走る。
「先を見て!下を見ていてはダメです。」
ものすごく納得するが、すぐには上手くできるようにならない。
ムラのあるアクセルワークでなく、メリハリのあるアクセルワークをすること、目の前の障害物だけでなく、その先を見ること…来年へ持ち越すテーマになるようだ。
バリアブルで行こう!

午後は場所を移してのコーススラローム。
これは、バリアブル(variable;変えられる、可変的な)というコースだそうで、パイロンを動かして、いろいろ変更が可能、という意味だろうか。
スタートしたら右にUターン、そのままほぼUターンに近いカーブを3つ曲がる。
次は左に急カーブ、S字を抜けて、オフセットスラロームというか、応用千鳥走行みたいなコースになっている(絵に描くことはできるのだが、言葉で表現できない…残念)。
私には、最初のUターン繰り返しがやたら難しく、遅いくせに、進むにつれてライン取りがどんどん破綻していく。
「特例です。前の人にすぐ続いて走っていいです。」
インストラクターに言われ、必死で前車のラインをたどるが、「スタートダッシュで出遅れる、どこまで行っても離される」といった状態。
小さく回るには、リアブレーキを引きずるだけでなく、フロントブレーキをちょっぴり残すのがコツだそうだが、なかなかできるようにならない。
「(Uターンの角にある)パイロン目指して飛び込んでいってはダメです。」
大きく入って小さく出る!と思っても、Uターンのきついカーブでは、いつどんなタイミングで、視線を移せばいいのか、よくわからない。
わからないままに、身体は素直に順応していったようで、少しずつ膨らまずに曲がれるようにはなっていったが、連続するUターン、今後の大きな課題のひとつになりそうな気がする。

さて、応用千鳥みたいな部分だが、これはなぜかかなり上手く、ではなく、楽しくできた。
なんというか、今の私がモンスターではできない、「思いっきりハンドルを切る」ことが、CB750ならできそうで、臆せずパイロンとパイロンの間に入っていけるのだ。
かなりの快感である。
Uターンと違って、見るべき物はすべて前方にあるし、走っているうちに結構スピードがあがってきて面白かった。

「初めてでしたね、どうでしたか?」
もうすぐ終了という頃、インストラクターが声をかけてくれる。
「手が疲れました。」
「それは、ハンドルを力一杯握りしめてるからです。本当は、支えるだけでいいのです。少しずつ、慣れていくようにしましょう。最初の頃に比べると、ずいぶん曲がれるようになりましたよ。あと少しですが、ムリせずやってください。」
見ていてくれる人がいるというのは、うれしいものだ(って、それがスクールなんだけど)。

こんな内容で、おそらく2005年最後のスクールは終了した。
ふと気がついたんだけど、こうして文章に書いている今、私は走ったコースをありありと思い浮かべることができる。
以前はこんなこと無かった。
これって、もしかして、何をやったか、何が自分の課題だったか、わかるようになってきたから、なのではないだろうか。
これまでは、その日の練習についていくだけで、いっぱいいっぱいだったワケだ。
最近になって、ようやく、練習したことを反芻できる程度には理解し始めた、ってことか(遅い…)。
練習前に、緊張のあまり青くなって震えている、うぶな生娘、じゃなくて生徒でいたかった気もするが、私はどんどん、先へ進んでいく。
これからは、何かを初めて知る驚きや、初めてできた時の感動は、少なくなっていくのかもしれない。
けれど、より深く理解する喜びや、より確実にできるようになっていく幸せが待っているような気がする。
たぶん、なんだけどね。

さて、来年は、どれくらい「マスター オブ モンスター」に近づいていけるのだろうか。

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