#42 第1回TEC-R安全運転競技大会

コーススラロームを走る(写真提供:sayoさん)

誘惑の甘いワナ

「あなたもSafety Japanインストラクター競技大会の雰囲気を経験してみませんか!?」
そんな誘い文句に背中をいじられて、第1回TEC-R安全運転競技大会に参加してしまった。
競技内容は、「一本橋、8の字・パイロンスラローム、コーススラローム、シークレット競技(当日発表)」とのこと。
今、自分が一番扱いやすいと思っているCB400SFで挑戦してみれば、素の実力がはっきりするのでは?と思っての参加だった。
…が、実はこの誘い文句には、深い意味が隠されていた。
世間知らずの私は、そんな事情は想像もできず、運動会気分で、虎の穴!?に入ってしまったのだ。
そして、風もなく日射しのまぶしいクリスマスの朝、大会は始まった。
一本橋はビギナー以下
減点項目 点数 備考
基準タイム不足(0.1秒毎に) 1点  
発進時安全不確認(ゴール後の再発進時も含む) 300点  
停止時の右足着地 300点  
足つき、落輪(測定終了後の後輪落輪も含む)、転倒 記録なし  

競技はカテゴリーA(HMS上級コース参加経験者。使用車両はCB750限定)、カテゴリーB(HMS初級・中級・バランスファーストのいずれかの参加経験者、使用車両はCB750、CB400、ホーネット250、VTR250のいずれかを選択)に分かれて行われる。
但し競技内容は同じで、ゼッケンの色(カテゴリーAは赤、Bは青)で区別される。
青の21番を付けた私の、最初の課題は一本橋、出走はなんと4番手である。
この一本橋、持ち点1000点からの減点方式で、基準タイムは60秒(!!)、基準タイム不足0.1秒ごとに1点減点される。
15秒の壁も破れない(←ばか)アタシにゃムリだ〜!!
という甘ったれた根性がモロに出たのか、見事に落輪し、「記録なし」
先日普通二輪免許をとったばかりという参加者の女性が、60秒なんて全然ムリだけど、卒検なら合格のタイムだったからいいわ、と笑っていた。
私は卒検なら不合格ってことか。
速度感覚

シークレット競技は、「速度感覚」というのもので、決められた区間を指定速度(50km/h)ぴったりで走ればボーナスポイントがもらえるというもの。
当然ながら、速度計と回転計が黒いガムテープで覆われた車両を使う。
カメの呪いがかかった私としては、ちょっと速いかな?というくらいの感覚で走ればバッチリのはずだ。
エンジン音に耳を澄ませて、これぞ!というアクセルで走った。
8の字・直線パイロンスラローム
減点項目 点数 備考
基準タイム不足(0.1秒毎に) 5点  
パイロン、マーカー接触 100点 1回につき
発進時安全不確認(ゴール後の再発進時も含む) 300点  
停止時の右足着地 300点  
ゴール枠(パイロン)接触、または逸脱 300点  
コース逸脱(ショートカットでゴールした場合) 500点  
パイロン倒し 記録なし  
転倒 記録なし  

午前中最後の課題は、直線パイロンスラロームで8の字まで行き、8の字を回った後、また直線パイロンスラロームで戻ってくる、というもの。
遅くたって構わない(減点はされるけど)、それ以外はノーミスで走りきろう!そう決心して走り出す。
やはり緊張しているのか、時折アクセルワークがギクシャクしたけれど、何とかパイロンやマーカーに触れることもなくゴール。
やった!と思ったとたん、ゴールの左脇にいた審判員がばっ!と赤旗を揚げた。
「右足着地です。」
え…!?
そう、ゴールしたとたん、よろけそうになって、右足で地面をキックしてしまったのだ。
この時点で、まだ競技は終了していないので、右足着地しちゃったことになるのだった。

そんな調子で午前中の課題は終了し、まだお昼なのに、気分はすっかりたそがれてしまった。
昼休みはコースを下見

そんなにヘタクソなのに、どうして競技会に出るんだろう?
夫はいつも不思議がるが、自分では答えははっきりしている。
ヘタクソだからこそ、自分の実力を機会あるごとに計っておきたいから。
私は今でも、大型二輪免許を取る時に、卒検で2回も不合格になったこと、合格した時も70点ギリギリしか取れなかったことを忘れていない。
たぶん、一生忘れられないと思う。
それぐらい辛かった。
だから、これからは、そんな思いをしなくていいように、いつも自分の実力を知っていたいのだ。

広々としたコースの脇で、参加者同士座ってお弁当を食べた後は、午後のコーススラロームの下見をする。
パイロンが比較的細かく置かれていて、コースを間違うようなことはなさそうだったが、ライン取りまで含め、確認して回った。
カテゴリーAに出場している、二俣川の大柄な指導員が通りかかり、ライン取りやギア選択をアドバイスしてくれた。
「ギアは一速です!ただ、あの長い直線だけは、一速だと振り切っちゃうかもしれないから、あそこだけは二速かな。」
楽しそうな指導員、足早にコースを進んでいく。
コースを走るのは、笑みがこぼれるほど楽しいことなのだ。
午前中のことはとりあえず忘れて、午後は大好きなコーススラロームを楽しく走ろう。
コーススラロームは一速で
減点項目 点数 備考
基準タイム不足(0.1秒毎に) 3点 最大減点1000点
パイロン、マーカー接触 100点 1回につき
落輪 100点 1回につき
発進時安全不確認(ゴール後の再発進時も含む) 300点  
停止時の右足着地 300点  
ゴール枠(パイロン)接触、または逸脱 300点  
コース逸脱(ショートカットでゴールした場合) 500点  
パイロン倒し 記録なし  
転倒 記録なし  

そして、午後はいよいよコーススラローム、私の出走順位は第一組の2番…他の出場者の走行を事前に見ることはできない。
ウォーミングアップと1回だけの試走の後、何となく吹っ切れたような気分でスタートした。
ムリは承知で、一速で回ってみよう。
実際走り出すと、うわー、難しい!!
S字やクランク、Uターンで、アクセルの加減が、何というか、大変デリケートなのだ。
でも、どのみちワタシってカメだから、もうタイムのことは忘れて(というか最初から問題外)、きれいに丁寧に走ることに専念する。
そして、例の直線を二速で抜けた後、ギアを一速に戻し…しまった、直線パイロンスラロームだ!!
ちょっと読みが甘かった。
私が一速で直線パイロンスラロームをやるのは…ムリである。
とにかくパイロンに接触しないでスラロームするのが精一杯だった。
直パイの後はちょっと厳しいオフセットスラローム、リズムを崩しかけている私はよろけて、左足で地面を蹴りたい誘惑を必死でこらえる。
宙を舞う猫キック、それでも何とかこらえてゴールした。
コースアウトも接触もなし、自分的には、ベストを尽くした。
「ものすごい安全運転でしたね。」
見ていた他の参加者から声をかけられた。
要するに、いつにも増してめちゃくちゃ遅かったということだ。

競技の最後に、レインボー埼玉のインストラクターによる模範走行があった。
スタート! とっても速い…
…別世界の方ですね、ホント。
桶川の日は落ちて

結果発表は競技終了後の懇親会の中で行われる。
猛者たちの群れの中、張り出された成績表を見ると、私の結果はやっぱり凄い。
一本橋は落ちたから問題外として、8の字+直線パイロンスラロームは25秒基準のところを44秒、コーススラロームは75秒基準を141.1秒…全部問題外か。
20年のキャリアも空しくなる成績であった。
因みに、シークレット競技は、誰もビンゴできなかったのか、計測器のトラブルか、ボーナスポイントを獲得した選手はいなかったようだ。

さて、この競技会が開催されるに至った経緯なのだが、聞くところによると、今年のSafety Japanインストラクター競技大会で見学者がとても多かったから、らしい。
そんなにみなさん興味があるなら、同様の競技会やってみましょうか?ということになったとか。
つまり、もともとこの競技会、イントラさんたちの大会を見学してそれを糧にできるようなレベルの人たちが出るべきものだった、ってことか。
私、出る幕じゃなかったかも。
でもまあ、楽しかったからいいか(枯れ木も山の賑わいとも言うし)。

ところで、最近、ちょっと感じていることなのだが、男の人は「日本一のスクールで、日本一のインストラクターに習うのが幸せ」なのかな?
私の偏見かもしれないけれど、女の人はそうじゃないような気がする。
とりあえず、私自身についてなら、(今のところは)そうじゃない。
バイクの神様が勇気をくれたから、白状してしまおう。
自分のことをよくわかってくれている人に教わるのが、本当は一番幸せなのだということを。
私にとって、スーパーインストラクターは、それより他の誰でもない。
・・・私が「まじめでわがまま」だからなのだろうか。
まあ、これは余談である。

来年も、自分なりのペースで、マスター オブ モンスターをめざして行こう。

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