#59 祐天寺一期一会

チョイ古な白バイ

これは、モンスターを手放す半年ほど前、目黒署が主催する二輪車実技講習会に参加した時のお話。
その時には思いもよらなかったのだが、この講習会が、モンスターで参加した最後の講習会となってしまった。

南武沿線道路でロックオン
この講習会は開始時刻が遅いので(受付12:30から)、朝のうちにモンスターをバイクパーキングから持ってくる時間的余裕はたっぷりあった。
ちょうど新年の房総ツーリング以来、1ヶ月ぶりのモンスターだったが、そんなブランク?は感じないほど調子が良かった(マシンの)。
南武沿線道路を、気分良く走っていると、バックミラーに1台のバイクが映った。
ぴったり後をついて走っている。
普通、私の後ろに来たバイクは、さっさと私を抜かして走り去っていくんだけど。
バックミラーの中には、黒いウェアに身を包んだ、やたら男前のライダー、白いメット、白いVFR、そしてフロントグラスに「かながわ」の4文字・・・
ウソでしょ!?
なんで私みたいな遅いバイクにくっついてくるのよ!?(男前の白バイでうれしいが)
確かに今日は上下ドカのレザーウェアでキメてるし、モンスターはカーボンパーツバリバリに換装して気合入ってるけど、カメの呪いも標準装備・・・。
白バイ隊員は、何を勘違いしたのか、駅前交差点で私が左折するまで、ぴったり後について離れなかった。
まあ、最近は暴走族の高齢化が進んでいると新聞に書いてあったので、アブナイおばはんかと思われたのかも。
というか、私の前は大型トラックが車線をめいっぱい使っていて、すり抜けも追い越しもできなかっただけなのか?

目黒署二輪車実技講習会
そんな朝のひとときを過ごした後、会場の祐天寺駐車場へ出かけた。
広いとは言えない会場に、ちらりほらりと集まってくる受講生、そして指導員・・・。
砧でよくお世話になるCBR600(Fシリーズ)の指導員と、二俣川のNSR(青系)の指導員が何故かいて、説明によると応援ということらしい。
砧の指導員には、できればこのモンスターと砧に頻出する黒いシェルパが同一人物(=私)であることに気付いて欲しくないと思った。
が、バレバレだったことは、この日の翌日の砧の講習会でさっさと判明してしまう。
やはり指導員は侮れない。

私は誰でしょう?

点検
講習会場の向かいには、HONDAの看板が上がっていて、夫(NSRで参加)と
「コケてもすぐに修理できるよ」
などと軽口を叩きながら車両の点検を始めた。
が、すぐに私は凍り付いてしまった。
・・・リアタイヤにホッチキスがささってる!!
慌てふためいたが、周囲の受講生が、大丈夫、このままにしておけば、とりあえず終了まではもつよ、と励ましてくれた。

講習は、低速中心ということで、千鳥・一本橋・8の字・コーススラロームのメニュー。
迷わず「初心者と断言できる組」に入る。
千鳥
実は私、モンスターのフルロックが怖くなくなってきた・・・のだが、難しいことに変わりはない。
今回も、4ヶ所の曲がり角のうち、1ヶ所おまけしてもらって、ようやく通過できる程度。
しかもあまりによろけて足を着くもんだから、CBRの指導員が後ろを支えてくれた。
この講習会で、ようやく知ったのだが、千鳥とは
「ハンドルを殺す」
練習なのだそうだ。
ハンドルをフルロックで動かさない→倒れてきたらアクセルを開ける→スピードが出すぎたらリアブレーキ(クラッチ切ってもFブレーキは使わない)
モンスターはたやすくフルロックするので、怖がりさえしなければ、いい練習になるような気もする。
8の字
「大きく入って小さく出る」の鉄則を守れない。
それどころか、アクセルとリアブレーキで回れない。
エンストが怖くて、つい半クラッチを使ってしまう。
「怖いですよね。半クラッチ使っちゃいますよね。」
とっても古そうな白バイに乗った、とっても若い白バイ隊員が、にっこりして話しかけてくれた。
もっとニーグリップして、後ろの方に座って、肩の力を抜いて、と丁寧に教えてくれる。
コーススラローム
「深呼吸して〜。リラックス、リラックス。」
砧からきた指導員に励まされ、スタートしようとしたら、いきなりエンスト。
「大丈夫、大丈夫。」
更に励まされ、気を取り直して走り出す。
HMSとスーパーシェルパで練習した成果のひとつは、一速で走ることを受け入れられるようになったこと。
スピードが出せないなら、一速でゆっくり丁寧に走る練習をしよう。
モンスターなら、ホントは二速で、アクセルとリアブレーキのバランスを取りながら走る方がいいのかもしれないけれど。
遅いなりに、モンスターと一体になることを心がける。
自分の大好きなバイクを抱きしめているようで、ほんわかと優しい気持ちがあふれてくる。

ほんの2時間ほどの練習だったが、初めて二俣川に参加した頃みたいに楽しくて幸せな講習会だった。
私は自分のバイクが、モンスターが好き。
こんなへなちょこを主に持ったモンスターは不幸かもしれないが、モンスターに乗っていると、心の底から湧き上がってくるものがあるのだった。

さて、車両点検で発見したホッチキスを抜いてもらうため、講習会場の向かいのホンダに立ち寄ろうとしたら、そこはバイクショップではなく農機具屋さんだった。
仕方がないので、ホッチキスがささったまま、バイク屋さんを探しながら帰路についた。
そんなオチまで含めて、たった一度の祐天寺、今となっては懐かしくも切ない、冬の日の思い出である。

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