王の謎

まず漢字の部首に関して少し説明を。ある漢字がどの部首に属するか、という分類は、多くの辞書では中国で作られた『康煕字典』の、字義をもとにした部首配列がもとになっている。日本最大の漢和辞典『大漢和辭典』でも康煕字典の部首に倣っている。

しかし現在では、この康煕字典の部首が実用に適さないところがある。例えば、帰(歸)は止部、点(點)は黒部と、新字体にない構成要素がその属する部首となっていることがあるのだ。またけものへんが犬部、りっしんべんが心部など、単に構成要素の形だけでは部首を判別するのがやや難しいものもある。

そんなわけで、現在の漢和辞典では独自の部首配列を作っているものもある。が、このページでは部首は康煕字典に倣うものとする。

でタイトルの「王」であるが、この漢字は部首索引では「玉部0画」に属していたりする。

これはおかしくはないだろうか。王が玉部に属するのなら「玉部−1画」とすべきでは? いやそもそも「王」という部首があって、玉こそ「王部一画」に属するべきではないのか? という疑問が、このことを知ったときに浮かんだのでした。

そこで大漢和辭典をよく読んでみると、以下のような歴史があったことが分かりました。

そもそも「玉」という字は、最初は点(丶)はついていませんでした。つまり字の形は「王」と同じだったのです。それで昔は二つの字を区別するために、真ん中の横棒を、「玉」はど真ん中に、「王」は真ん中よりやや上に引く、としていました。しかし見た目に分かりにくいことは変り無いので、最終的には「玉」の方に点をつけるようになったというわけです。

「玉」が偏になったときに点がつかない(「球」「珠」など)のは、その時の名残なのでしょう。

(1998年8月02日)

北村曉 kits@akatsukinishisu.net