H16.10.4 県民企業常任委員会 教育特区構想

小川委員 

 昨年度から私が伺ってきました、そして支援もしてきた教育特区構想で、県内の藤野町で二つのNPOが申請をして特区で認定をされた。そして新しい私立学校の新設に向けて準備をしてきた。その件について伺いたいと思います。

 神奈川新聞で10月2日、特区認定の取下げ、藤野町が内閣府に出したということが報道されておりました。このライナスの会というのは特区認定を受けたときもいち早く記者会見をされて、NPOとしてはじめて特区で認定されたと発表されておりましたけれども、そのライナスの会、LDやADHDの子供たちを対象にした学校を藤野町で開設する準備を続けてこられたけれども、5月に藤野町からも見合わせるようにという要請を受けて、つい先日、断念をされたということでございましたけれども、この辺の経緯はどういうふうになっているのか、承知されている範囲で結構ですから伺いたいと思います。

学事振興課長

 今、お話がございましたように、3月に藤野町が申請いたしまして、内閣総理大臣の方から特区認定というお返事をいただきまして、こちらの場合には藤野町の中で学校になりそうだという施設の確保、ちょっと建物が古いとか耐震上の構造がどうなのかという問題はあったのですが一つ見つかりました。だた、私ども学校という場合には一つの要件といたしましてグラウンドの問題がございます。これは今、藤野ですと小学校を閉じるという関係もございまして、閉じる小学校のグラウンドを使えそうだというお話がございまして、話を進めていたのですけれども、ただ、町の中でも小学校を統廃合するということになりますと、うちの小学校は困るとか、そちらの小学校はどうだとかいろいろなことがございまして、このライナスの学校が来ることによりまして、ここに来ちゃうとこっちの小学校がなくなっちゃうとか、ここに来ることによってこちらの方がどくのかということで、町の中でいろいろ小学校の跡地のグラウンドを使うということの調整がうまく進んでいませんで、町の方も鋭意そこら辺は力を入れてくれたわけですけれども、やはりこの間、住民の方との調整がうまくいかなかったということが大きな理由としてあって、今回は報道につながるような特区の取下げということになったところでございます。

小川委員

 ライナスの会は他の市町村とも協議をして、来年の春の開校を目指したいというふうにおっしゃっているみたいなのですが、特区申請というのは市町村との協議に非常に時間がかかる。認定もすぐに受けられないという現状があるかと思うのですが、今取り下げて、来年の春の特区認定による開校というのは非常に時間的に難しいのではないかなというふうに私は思うのですが、一度特区認定を受けていると、優遇措置とかそういうのはあるのでしょうか。

学事振興課長

 今回の場合には、ライナスの場合には、特区というが一つの手法、ただ、それだけじゃなくて学校法人ということで、いわゆる特区上の学校ではなくて、学校教育法の適用になる学校という点も目指しているところがございます。そういった意味で二重の意味がございます。一つには特区の中の特別なカリキュラムということですと、今お話ございましたように、もともと藤野町で一つ受けているということですから、国の方もいろいろな問題というのはかなりスムーズにいくだろうなということは想像されます。     

ところがもう一つの学校という部分になりますと、先ほど藤野町と同じようなことでございますけれども、施設がちゃんとしっかりと、お子さんが行っても地震が来て大丈夫な施設なのか。お子さんがちゃんと体育ができるようなグラウンドが用意できるのかといったようないろいろな問題をクリアしないと学校ということができません。ということになりますと、ちょっと今度、具体の名前は申し上げられませんけれども、新しいところの市町村と調整していることは我々も承知していますし、私ども、現実にそこの間に入ってお話も一緒にさせていただいています。しかし、なかなかそういった施設面においてクリアしなければいけない課題というのは、結構大きなものがあるのかなというふうに思っています。

小川委員

 先ほど耐震上の問題もあったということが分かったとおっしゃっていましたけれども、これはどこの時点でわかったのですか。学事振興課で分かったのでしょうか。

学事振興課長

 私ども学校の関係で、市町村の方から、ライナスの方からもいろいろな御相談をいただいておりまして、かなり長い間調整してございます。前の藤野のところですと我々の方も施設を見ていますが、前の藤野の場所というのはかなり古い、いわゆる木造ですけれども工場跡地のような形のものでございましたので、だれが見ても耐震上とか建築基準法上の学校として認められる施設かどうかは分からないと。ただ、我々もそういう権能はございませんから、それは土木事務所とか建築基準法の所管のところと十分調整するようにと申し上げたんですけれども、なかなかそこにも大きなネックがあったのかなというのが現状でございます。

小川委員

 だれが見ても耐震上の問題がありそうだというお話がありましたけれども、学校として認められるには借地や借家でも良いという、校舎を借りても良いという優遇措置が特区にあるにしても、学校として求められる最低限の要件の見込みが甘かったというような点も今の御答弁からも分かるのですけれども、私も幾つかこういうような教育特区についてNPOなどから相談を受けたこともありますし、相談をされているところを見たところもありますけれども、教育特区で認定されればすべての要件が緩やかになるとか、そのような甘い判断に立って期待しているNPOが非常に多いというふうに私は思っております。

ただ、このライナスの会の場合には、そういう学校として認められるための要件をもうちょっと厳しく最初から考えていれば、無駄な時間を過ごさなくても良かったのかなと、非常に気の毒にも思いますし、残念にも思います。そういう点については学事振興課で御指導もされてきたのだと思いますけれども、今も努力もされているということですから、これからも温かい御支援をお願いしたいと思います。

 日本のフリースクールの歴史の中では、12月にも御答弁いただいておりますけれども、ライナスの会のように予備校であったところ、塾のようなところであったものがNPO法人となって、フリースクールとなっている流れと、それから藤野町でもう一つ特区認定されましたシュタイナー学園のように、一つの確固たる教育理論に基づいたフリースクールと、二つの大きな流れがあるということは委員会でも答弁していただきましたし、私もそういうふうに当初から認識はしておりましたけれども、その一つの流れであるライナスの会がこの度は非常に残念なことになった。しかし、藤野町でもう一つ教育特区で認定が下りたNPO法人の東京シュタイナーシューレ、これは非常にうまく経過しているというふうに伺っておりますが、東京シュタイナーシューレの方はどういうふうになっておりますでしょうか。

学事振興課長

 シュタイナーシューレにつきましては、私どもの方ともいろいろな調整をしまして、向こうの方も学校としての認可申請、私立学校審議会の審議を経た上で学校認定、来年4月に開きたいということで調整してきました。私どもの方のいろいろな施設的な問題とか、いろいろな点も、非常にラッキーなことに、たまたま藤野町の廃校になる問題のないところの校舎を借りることができたという、ちょっと非常にラッキーな面もございます。学校ですから施設的な問題、それからグラウンドもちょっと若干別なところに借りますけれども、かなりの部分は非常に幸運、不動産関係の取引でたまたま良いのにめぐり合ったという幸運的なこともございまして、そういう施設的な面というのはかなり順調に進んでございました。ということを受けまして、資金的なものも少し御準備の方があったようでございまして、私どもの方の審査の段階でも大きな問題ないということで、今年度の1回目の私学審議会にかけまして、やはり私学審議会、それぞれ専門の委員の方からは、グラウンドの追加の部分とか建物の構造とかいろいろな御指摘も受けましたので、次の2回目の審議会、10月中に開こうと思っておりますけれども、それに向けまして、御指摘のあった部分等いろいろ調整しながら、現在開校に向けまして進んでいるというような状況でございます。

小川委員

 ということは、大枠として私学として開校が見込めると、私学審議会において認められていると、まだ認可は下りていないけれども、見込みが強いというふうに理解してよろしいでしょうか。

学事振興課長

 まだ1回目の審議会、認可のための審議会ではなくて、事前の計画書という段階でございます。ですから今委員のお話ですとちょっとやや先走りのとらえ方でございまして、次の第2回目の審議会におきまして、我々の方もそういう方向に向けまして、是非良い学校ができればというふうに思って進めているところでございます。

小川委員

 私学審議会でもいろいろな意見が出されているのじゃないかなというふうに思っておりますし、漏れ伺っているところもあるのですけれども、学校としての大枠は良いのじゃないかと。いろいろ要件を指摘された部分は、今日、学事振興課の方にそれらについて改善した書類がシュタイナーシューレから提出されたというお話も伺ったのですけれども、本当ですか。

学事振興課長

 調整していたということは承知していますけれども、今日届いたかということについては、ちょっと今確認はできませんけれども、そういうお話ですから、多分間違いないだろうというふうに思います。

小川委員

 私はシュタイナーという理論についてあまり深く存じませんでしたので、自分で東京シュタイナーシューレへも行った。そして本も数冊読んで、実際にこの東京シュタイナーシューレというのは16年間もフリースクールで頑張ってきた実績があって、シュタイナー学園として、高校の卒業生もはじめて出したと。今までNPOでずっとしっかり頑張ってきて、組織力もしっかりしている、考え方も確固たるものがある、運営している人々もすばらしい。先生たちも、皆、ドイツのシュタイナー学校に留学して、本筋を勉強してきている。そういうしっかりしたNPOであるけれども、やはり教育特区でもNPO法人立の学校として申請するのは非常にためらいがあったというふうに伺いました。NPO法人立の学校だと助成金が受けられない。フリースクールでやってきたものを学校法人にする決断をしたのは、やはり父兄に対する負担がかなり大きいということがあって、授業料等の問題もあって、学校法人立に特区を利用して変身する。そういう決断をされたというふうに私は伺ってまいりました。それだけに、これだけしっかりしたNPO法人、開設に当たってのお金もしっかり、1億円以上を集められたというふうに伺っておりますけれども、しっかりしたNPO法人であっても、NPO法人立というのは非常に難しいのだなと、この例をとっても私は理解しているわけです。

今審議していただいている私学審議会は、こういう新しいタイプの教育特区ではじめてフリースクールから私立学校に変わる、そういう学校に対して前向きに検討いただいている、理解を示していただいている、というのは非常にすばらしいなというふうに私は思っておりますが、審議会の中でもいろいろな意見が出ているのでしょうが、漏らしてはいけないのかもしれないけれども、差し支えない範囲で何か伺えるものがあったら伺いたいです。

学事振興課長

 一つには、これ私学審議会の中の審議でございますので、公開原則でございますけれども、非公開の中で審議すべき例もございます。ただ、一つの大きな疑問点とすれば、やはり開く場所が藤野町という、かなり地域というか、お子さんはどこから通うのだと。シュタイナーシューレというのは、小中一貫で9年制の学校ということを具体の申請で上げております。我々でも藤野町というのは通うとなるとなかなか大変でございます。小学校のお子さんがとなるとそこら辺はどうするのかと。御父兄の方の中には、委員のお話がございましたように、シュタイナーシューレというのは芸術性を重んじた考え方、特色ある教育でございますから、是非移り住んででもやりたいというようなこと、藤野町が積極的なのはそういうところに一つの理解を示しているということで、やはりお子さんがどうやって通うのかというのが一つの大きな部分と。また、シュタイナーシューレといいますと、そういう特殊性が何か排他的なイメージにつながる場合もございます。そういう点がどうなのかなというようなこと。ただ、地元もなかなか理解を示されているというお話を伺ってございます。

 あと先ほど少し申し上げましたけれども、施設的な基準の中で、やはり小学校と中学校が一緒になりますと、生徒同士がぶつかる可能性があるような形ですと、やはり体格差がありますので、そこら辺の事故にも十分気をつけるようにということも審議会の方からもお話いただいております。そういうような多方面にわたりまして、私学審議会では、学識経験者それから各私立学校を運営されている方から貴重な意見をいただき、議論を進めているという状況でございます。

小川委員

 今出されたいろいろな疑念については、私も全部答えが言えるぐらい勉強したので分かるのですけれども、藤野町という場所、今は三鷹でやっていられますから、そこに在住したままでも通い切れる。もしくは引っ越しも可能ということで、何しろ藤野町の少子化対策にもなる、そして廃校になる学校の再利用にも結び付く。そして藤野町も芸術の町として今まで特色を出してきて、シュタイナー理論というのは音楽と芸術を重んじる理論ですので、非常にぴったり合ったと。そして藤野町がアーティスト・イン・レジデンスという国の補助を受けて海外からアーティストを6箇月間招へいして、その国の芸術をその町に浸透させるというそういう部分でも、藤野町はオーストリアと提携して毎年芸術家を呼ばれていたそうで、ルドルフ・シュタイナーという哲学者もオーストリアの生まれなので、非常に藤野町との御縁が最初からあった。それだけ理解を得られるコンセンサスが最初からあったということで、非常にタイミングも良かった、運も良かった。でも、そういうところを選んで教育特区の相談に最初から藤野町へ行かれたようですから、下準備もNPOの方で十分にされてきたのだなというふうに私は理解しております。

ところで、シュタイナー学校、世界でシュタイナー学校がない国はどこだか知っていますか。

学事振興課長 

申し訳ありませんが、存じ上げておりません。

小川委員 

北朝鮮と中国と日本だけなのですよ。あとは大体フィリピンでもタイでもシュタイナー学校というのがあるのです。学校とちゃんと認定された学校なのですよ。そういうシュタイナー学校というものが、国で認められた学校がないのは今申し上げた日本と北朝鮮と中国だけだったのですよ。私が教育特区のシンポジウムに行ったときにその話を伺ってきたのですが、ああ、そうだったのかと。これを神奈川県が初認可すれば、北朝鮮と中国と一緒だという部分がクリアできると、非常にうれしいことだなと。神奈川県にとっても神奈川の教育水準を上げることに大いに一役買うことになるかなというふうに思いました。次は1027日に審議会が開かれるというふうに私伺っているのですが、1027日に審議会が開かれて、そこで是非が検討されるのかと思いますけれども、私が伺っているスケジュールでよろしいのでしょうか。

学事振興課長 

お話にございましたように、1027日に審議会を開催したいということで調整してございます。

小川委員

 これからの予定についてあまり踏み込んで答弁されると、越権行為にもなっちゃうし、非常に慎重にお答えされているというふうに印象を受けましたけれども、東京シュタイナーシューレのお話を伺いますと、どうやら近い将来、私立学校として認可を下ろしていただけそうだという感触を伺っておりますので、私学審議会として非常に前向きな御審議をいただいているそうですから、これからも前向きに御審議をいただきまして、一日も早い認可を下ろしていただけますように心からお願いを申し上げまして、今日の質問を終わらせたいと思います。