NOVEL 4-1(Second)

ソクトア第2章4巻の1(後半)


 一夜明けて、ルクトリア城は騒然としていた。もちろんジークとライルの死のせ
いもあるが、それ以上にフジーヤ、ルイシー、トーリス、サイジン、レルファが居
ないからだ。夜中に、どこか出かけたのだろうか?
 ゲラムは捜索で、てんやわんやだった。どこを捜しても居ない。マレルも気が付
いたようで、レルファまで居なくなってしまったので、ショックを受けていた。こ
れで、レルファまで失ったら、一人になってしまうと思ったのだろう。
 しかし、どこにも居なかった。後調べてないのは、棺が治めてある霊安室だけだ。
いくら何でも、ここには居ないと思って捜して無かったのだ。
 皆は、霊安室の前に集まる。と言うのも、ここに誰かが入った形跡が、あるから
だ。間違いなく、ここだろう。しかし何のために入ったのか検討もつかないでいた。
「ここに間違いないようね。」
 ルイは周りを見渡す。しかし、他に捜すべき所は、全て捜したはずだ。
「・・・何の接点も見当たらないヨ。」
 ミリィは元気が無かった。ジークが居ない朝を迎えるのは、初めてだったからだ。
「センセー。こんな所で、何してたのかなぁ?」
 ツィリルが、不思議そうにしていた。朝、気が付いたら、横にトーリスが居なか
ったので、ビックリして、皆を起こしたのは、このツィリルだった。
「昨日は・・・さすがに、俺も休んでいたから分からんな。」
 ジュダは首を傾げる。ネイガとの傷が、まだ完全に癒えていない。かなりの激闘
だった証拠だ。
「私とした事が・・・すっかり眠ってしまったようだな。」
 赤毘車も、すっかり眠っていたようだ。お腹に赤ん坊が居るので、無理出来ない。
「とにかく、開けようよ。お姉ちゃんが居るかも知れないんでしょ?」
 ドラムが、レルファが居ないのでソワソワしている。
「そうだね。じゃあ僕が開けるから。」
 ゲラムが、扉に近づく。皆、ジークやライルの棺など見たくないのだ。ゲラムは、
こういう役を押し付けられてると、愚痴を言いたくなる。
 すると、扉の方から開いた。
「うーん・・・。あ、あれ?」
 レルファが、出てきた。そして皆が集まっているので、キョトキョトしていた。
「レルファ!!どうしたの!?心配したのよ。」
 マレルが、涙さえ浮かべている。どうやら心配させたのを、理解したようだ。
「済みません。色々ありましてね・・・。」
 サイジンが出てきた。
「後で、タップリ聞かせてもらうぞ。」
 グラウドが溜め息をつきながら、安心していた。グラウドも心配していたようだ。
「ご心配を、掛けさせましたね。」
 トーリスが、微笑しながら出てくる。
「センセー!!わたしに一言あっても良いんじゃなーい?」
 ツィリルが、頬を膨らませていた。
「済みません。何せ、急な用事だった物でね。」
 トーリスは、目を腫らしていた。しかし、それを極力見せないようにしている。
 しかし、皆は、その瞬間、固まる事になった。トーリス処の騒ぎでは無かった。
その人物が、ここから出てくるのは、有り得ない事だとさえ思った。
「・・・あれ?皆、集まってたのか。」
 それは、何とジークであった。皆、信じられないような顔をしていた。昨日、心
臓が止まっていた人物である。死亡を確認した人物でもあった。
「・・・嘘・・・ネ。」
 ミリィは、言葉が中々出なかった。喜びより先に、目の前に居る人物が、本当に
ジークかどうか、信じられずに居たのである。
「・・・ちょっと・・・ジーク?なの?」
 マレルも疑っていた。無理も無い話である。
「心配・・・掛けさせたな。これなら・・・信じてもらえるかな?」
 ジークは、背中に掛けてあるゼロ・ブレイドを、一気に抜いた。それは、何より
の証拠だった。ゼロ・ブレイドの輝きは、以前よりも増してジークを照らしていた。
「全く・・・兄さんったら派手ねぇ・・・。」
 レルファが呆れていた。確かに、一発でジークだと分かる演出だった。
「ハッハッハ。義兄上らしいですな!」
 サイジンが、馬鹿笑いする。
「困った物です。」
 トーリスは微笑する。その様子を見て、皆、我に返る。
「本当に・・・本当にジークなのネ?」
 ミリィは、喜びの涙で溢れてきた。
「ああ。ま、ちょっと死の淵を見てきたけどね。」
 ジークは軽口で答える。そしてゼロ・ブレイドを仕舞った。
「ジーク!!!」
 ミリィは、ジークの腕の中に飛び込んできた。それをジークは、受け止めると、
頭を撫でてやった。マレルも横で感涙していた。
「ジーク兄ちゃん!!良かった!!良かった!!」
 ゲラムでさえ、言葉にならない。
「ふう・・・。まずは安心した・・・が、訳を聞かせてくれるな?」
 ジュダは喜んでいたが、それだけで済ますつもりは無かった。
「ええ。俺が、ここに居るのは、ここに居る3人と・・・フジーヤさんにルイシー
さん。そして・・・父さんのおかげです。」
 ジークは、神妙な顔をしている。
「サイジン。説明頼む。俺じゃ説明下手でなぁ。」
 ジークはサイジンの肩を叩く。
「ま、また私ですか!?・・・私は、こんな役ばかり・・・。」
 サイジンは、がっくり肩を落とす。説明と言えば、サイジンと言う理念が、植え
付けられてるような感じがした。
 そして、サイジンは説明してやった。『魂流操心術』の事。そして、それに必要
な項目。そして自分たちが呼ばれた訳。そして、現在どうなっているのかをだ。
「・・・こういう訳です・・・。」
 サイジンは、起こった事を話し終えた。皆は、一概には喜べなかった。
「フジーヤ・・・。アイツが・・・。」
 ルースは肩を落とす。フジーヤとは親友だった。ライルに続いて、フジーヤを失
った悲しみは、大きかった。
「蘇生は・・・神でさえ触れられぬ禁忌。その代償を・・・払ったと言う訳か。」
 赤毘車は、目を伏せる。自分達が出来ない事を、フジーヤは、やってのけたのだ。
人間であるフジーヤが、正しく命を懸けて行ったのだ。しかし、禁忌は禁忌であっ
た。正しい事では無い。だが、やらねばならなかっただろう。それについて、赤毘
車は、責める事など出来そうも無かった。
「ジーク。俺は、ここに竜神として誓う。『人道』は、必ず成功させよう!」
 ジュダは、ジークに真剣な眼差しで言った。人間である彼らが、命を捨ててまで、
頑張っているのに、自分達が指を加えて見ているなど、許されない事だ。
「ええ。俺は、死の淵で誓いました。天の楽園の人々にも、俺の生き様を見せてや
るってね。俺は、どんな事があろうとも、生き抜いて、足掻いて見せますよ。」
 ジークは、拳を握りながら力説する。
「そういう訳です。頼みますよ?」
 トーリスは、父親の死と母親の別れがあって、辛いはずだが微笑んでいた。
「センセー・・・。」
 ツィリルが、心配そうに見ていた。
「大丈夫。私には貴女が、付いていますからね。」
 トーリスは、この上ないほど優しい眼差しを、ツィリルに投げてやった。
「わたしで役に立つなら、嬉しいな♪」
 ツィリルは、嬉しさのあまり微笑みを見せる。トーリスは、ツィリルだけは絶対
に、幸せにしてみせる。それこそが父と母と、レイアの願いだと思ったからだ。
「でも、レルファ。私を差し置いて、ずるいネ。」
 ミリィは、口を尖らせていた。ミリィは、ジークに呼びかける役をやりたかった
のだろう。しかしフジーヤが、それを許さなかったのだ。
「やらなくて正解だと思うわよ?あの光景は・・・ちょっとね・・・。」
 レルファは、またやれと言われれば、勘弁してもらいたかった。父親のグロテス
クな最期を、見てしまったのだ。棺の中に隠された父親の体を知っているのは、も
はや4人だけである。
「あの人が望んだ事なら、しょうがないわ。ジーク。ライルの分まで生きるのよ?」
 マレルは、母親の顔をしていた。ライルの死は辛い。しかし、ジークの肉となっ
て生きるのであれば、マレルにとっても納得の行く答えだった。
「父さんは、俺の誇りです。俺は、俺の誇りを、これから作っていきます。」
 ジークは深く頷いた。ジークの言動が、これまでとは少し違う。今までは、使命
感に燃えていた。だが、今では自分のための信念を感じる。何かを乗り越えたのだ
ろう。そう言う人間は、底知れなく強い。ジークの成長具合が、伝わってきた。
「まずは、葬式を済ませましょう。ライルさんも父さんも、あのままでは忍びない
ですからね。」
 トーリスが、皆に呼びかける。皆は深く頷いた。
 早速、作業に取り掛かる事になった。棺を運び出して墓の用意をする。そして、
墓地の見積もりを立てて、棺の大きさに合わせる。土葬だった。
 そんな中、ジークが、フジーヤの棺をマジマジと見ていた。
「どうしました?ジーク。」
 トーリスが声を掛けてくる。
「不思議な感じがしたんだ。本来なら、俺が入っていたんだろうな・・・って。」
 ジークは、フジーヤが自分が入るはずだった棺に入れられてるのを見て、生きて
いる事を実感する。
「そうかも知れませんね。父さんは、自分と貴方の命を、秤に架けたのかも知れま
せん。でもね。ジーク。父さんの魂も、貴方が受け継いでいると私は信じています。
だから、気にし過ぎ無い事です。」
 トーリスは、ジークの心の負担を軽くさせる。考え過ぎは良くないと、思ったの
だろう。それに実際、トーリスは、そう思っていたのだ。
「ジーク!ここに居たのネ?」
 ミリィが近寄って来た。
「ミリィ。どうした?」
 ジークは、ミリィが、余りにも真面目な顔をしているので、不思議に思う。
「どうした?じゃないヨ。心配したのヨ?」
 ミリィは、蘇生した後のジークと、まともに話していない。
「積もる話もあるでしょう。墓の用意は、私に任せて話してあげなさい。」
 トーリスは、ジークとミリィを気遣う。ジークは礼をすると、ミリィと木陰の方
へと向かう。
「ジーク・・・。私、もう生きていけないと思ってたネ・・・。」
 ミリィは、目を潤ませる。ここにジークが微笑んでくれている事が、幸せでなら
なかった。ジークも、ミリィの顔を見て、生きてて良かったと実感する。
「ミリィ。心配かけたな。でも、もう大丈夫だ・・・。」
 ジークは、ミリィを抱き寄せる。ミリィの髪の匂いがする。生きてる実感が、フ
ツフツと沸いてくる。
「もう、あんな想いは、ごめんヨ?」
 ミリィは、そう言うと、ジークの胸に顔を埋める。
「ミリィ。俺は死の淵を見て、2つの事を学んだんだ。一つは、皆の事だ。」
 ジークは説明してやる。ジークは、一回死んだ事は、決して無駄では無かったと
思う。学んだ2つの事は、これから生きてく上での糧になるだろう。
「皆に、これだけ心配される。それだけの存在に、自分はなったという実感だ。こ
の実感は、俺に力を与えてくれるんだ。」
 ジークは、それが嬉しかった。ライルよりもジークだからこそ、ここまで心配さ
れる。それだけの大きな存在に、自分は、なれたと言う実感を学んだのだ。
「でも・・・ジークは、皆のために無理するネ。私は、それが怖いヨ。」
 ミリィは、またジークが無理をするんじゃないかと思うと、気が気では無い。
「そのための2つ目なんだよ。ミリィ。俺は誰かのために闘ってきたと思っていた。
それは、間違いないかも知れない。でも、駄目なんだ。俺は、俺自身が望んで闘わ
なければ、全力で闘えなんかしない。そのためには、自分を大切にしなきゃ行けな
いんだ。だから、俺は自分の持てる力を出し切って、それ以上の無理はしない。」
 ジークは、この事を学んだのは、大きかった。所詮、人に頼まれて闘っていたと
言う意識では、土壇場で油断するかも知れない。だが、自分自身のためならば、全
力を出し切れるだろう。自分を大切に思う気持ちを持てば、勝てると信じている。
「そうネ・・・。それが、良いかも知れないネ。」
 ミリィは納得する。ジークは、無理し過ぎるのだ。それは、全力で闘う事とは、
別の事だ。却って、悪影響を及ぼしかねないのだ。
「安心しろ。俺は、誰が来ても、もう負けない。」
 ジークは、誰よりも安心させる目でミリィを見る。
「安心したネ。でも・・・ジーク。私は悔しいネ。」
 ミリィは口を尖らせる。
「レルファは、私よりジークの事・・・細かく知ってるヨ・・・。それが悔しいヨ。」
 ミリィは『魂流操心術』で呼ばれたのが、レルファだと言うのが、少し悔しかっ
たのだ。でも、仕方の無い事だと思っている。肉親には、まだ敵わないのだ。
「フッ。ハッハッハ!ならさ。・・・これから知れば良いさ。」
 ジークは、ミリィの髪を撫でてやる。
「そうするネ。だからジーク。これからも宜しくネ!」
 ミリィは、満面の笑みを浮かべていた。
 ジークは、これからは、そう簡単に無理は出来ないなと思ったのであった。


 妖精の森では、ミカルドやエルザードが、日々鍛錬を欠かさず過ごしていた。と
言うのも、クラーデスの演説が、相当効いたようだ。クラーデスの演説を聞く限り、
間違いなく本気だと言うのが、ミカルドには分かった。息子だからこそ、クラーデ
スの本気の度合いが分かるのだ。
 そして、クラーデスのパワーアップも、その時感じたのだ。しかも、只のパワー
アップでは無い。あの口調は、父が満足する程の強さを手に入れた、喜びの口調で
ある事も、ミカルドには分かっていたのだ。
(親父は・・・間違いなく、ソクトアを滅ぼすつもりだ・・・。)
 ミカルドの心配は、現実の物になろうとしている。この森も、いつかはクラーデ
スが、攻めてくるかも知れない。そして、その時は、刻一刻と迫って来ているのだ。
 とは言え、幸いな事もあった。情報によると『無道』には、人が集まってないと
の事だ。やはり滅びが優先の考え方では、賛同者も少ないのかも知れない。
 新しい世界を作る。これがクラーデスの理想なら、これまでの力の追い求める様
も、理解出来た。クラーデスは、創造神ソクトアに成り代わるつもりなのである。
そのためには、とてつもない力が要るだろう。しかし創造神ソクトアは、何をして
いるのであろうか?これだけソクトア大陸が、神や魔族が蔓延って大変だと言う時
に、肝心のソクトア神は、まるで動きがないと言う。自分の世界が壊されても、平
気なのだろうか?ミカルドが心配することでは無いが、この森を壊されたくは無い。
「ミカルド。どうしたの?」
 リーアが話しかけてくる。
「リーアか。ちょっとな。親父の事が気に掛かっただけだ。」
 ミカルドは素直に話す。この頃のミカルドは、初めて会った時の突き放した感じ
が無い。この森の人達にとっても、欠かせない存在にまでなっている。
「あのおっかない人が・・・貴方のお父さんだなんて、信じられないわ。」
 リーアは、演説している時のクラーデスを思い出す。淡々と、しゃべってはいた
が、話してる内容は、とてつもない内容だった。
「前にも話したろ?親父は、力を求めるのに手段を選ばないって。その力を得たん
だろう。だから、行動に出たんだよ。その行動の結果が、あの演説って訳だ。」
 ミカルドは、説明する。しかし、それと同時に考える。あのクラーデスが満足す
る程の力とはなんだろう?と。生半可な力では、クラーデスは満足しないはずだ。
(究極の力・・・か。もしくは、親父が必要としている力だろうな。)
 ミカルドは考えるが、予想も付かない。
「おい!ミカルド!!」
 エルザードが、慌ててミカルドの宿所の扉を叩く。
「開いてるぞ。どうした?」
 ミカルドが言うと、エルザードは扉を開けて入ってきた。
「落ち着いて聞けよ・・・。あのジークが・・・死んだ。」
 エルザードは、とんでもない事を言う。ミカルドは勿論、リーアも表情が固まっ
てしまった。
「・・・冗談にしても、性質が悪いぜ?」
 ミカルドは努めて、冷静に話そうとする。
「冗談で言うと思うか?本当の事だ。砕魔 健蔵と言う魔族が倒したらしい。」
 エルザードも、我が耳を疑ったのだが、信用出来る部下からの情報だった。
「・・・そうか。ジークは、療養中だったな・・・。その隙を狙ったのか。」
 ミカルドは頭を抱える。
「しかも、ライルもその手に掛かったようだ。だが、砕魔 健蔵も死亡したのでは
無いか?との事だ。」
 エルザードは、寄せられた報告書を読みながら、溜め息をつく。
「俺は、ジークの事は認めていたのだがな・・・。ここで倒れたか・・・。」
 ミカルドは、寂しそうな表情になる。
「となると・・・『覇道』の連中が、ここに来る可能性は大だな。」
 ミカルドは、次の事を考えていた。ジークが死んだとあれば、『覇道』の次の標
的は、魔族に反旗を翻してるミカルドだろう。
「私たちは、随分強くなった。『覇道』の連中が攻めてこようとも、負けんさ。」
 エルザードは、力瘤を作ってみせる。ミカルドは頷いたが、実際は、そんな甘い
物じゃないと分かっていた。何せ、あのジークまで死んだとの報告だ。例え健蔵が
死んだとしても、グロバスが残ってる以上、こちらに勝ち目は無いと思っている。
「エルザード。勝利のために、誇りを捨てる気はあるか?」
 ミカルドは突然聞いてきた。
「いきなり何だ?・・・勝利しなければ、森を守れないとあれば、誇りも捨てるさ。」
 エルザードは率直に答えた。一族の長として、当然の選択だろう。
「なら決まりだな。俺は、これからルクトリアに行く。」
 ミカルドは、いきなり凄い事を言う。
「な?何の用があると言うのだ?」
 エルザードは、ビックリする。ここで鍛錬を強化する物だとばっかり思っていた
のだ。その申し出なら、快く受けようと思っていた。
「同盟を結ぶのさ。他に生きる手段は無いだろうな。」
 ミカルドは冷静に言う。そう。この戦力では勝ち目が無い。しかし、残っている
『人道』の戦力と合わせれば、まだ勝機は見える。『人道』の者達も死にたくは無
い。ならば、この申し出を、受けるかも知れないと考えているのだ。
「・・・本気か?奴等が受けると思うか?彼らは人間なのだぞ?」
 エルザードは、人間に不信感を抱いている。エルフは、人間に住む場所を追いや
られたと言う歴史がある。どうしても、心からの信用は出来ないのだ。
「エルザード。だから、さっき聞いたのだ。森を守るために本気で考えるなら、奴
等と組むしかない。『法道』では、自然と接する森の妖精達は、受け入れないだろ
う。『覇道』は、寧ろ付け狙いに来るだろう。」
 ミカルドは、以下の背景から、同盟を結ぶなら『人道』しかないと思っていた。
そして、戦力が弱っている今がチャンスなのだ。彼らは、絶望しているからこそ、
手を差し伸べた時、真の同盟が生まれると言う物だ。
「・・・だが、誰が交渉に行くのだ?」
 エルザードは、渋々受け入れたようだ。いや、エルザードにも分かっているのだ。
それしか、森を守る方法が無いと言う事に・・・。
「他の奴等に、任せられるか。俺が行く。」
 ミカルドは自分を指差す。
「ちょっと。貴方が居なくなったら、この森は手薄になるわよ。」
 リーアは口を出す。しかし、それは本当の事だった。
「エルザードには残ってもらう。それならば、大丈夫だ。」
 ミカルドは、エルザードを信用していた。彼も、かなり強くなった。並みの魔族
相手ならば、守りきれるだろう。
「だが・・・魔族のお前だけでは、信用されぬぞ?」
 エルザードは指摘する。妖精で、エルザードの代理が務まる程の者が、付いて行
かなければ、礼を失すると言う物だ。
「・・・なら、私が行きます!」
 リーアは志願する。
「馬鹿を言うな。この任務は、危険なんだ。お前を連れて行けるか。」
 ミカルドは反対する。だが、リーアが心配なのだ。
「絶対に付いていくわ!ジークさんが死んだなら、この目で確かめたい物。」
 リーアは、ジーク達を知っていた。それだけに、死んだとは信じたくないのだ。
「そうか・・・。まぁ、リーアしか居ないだろうな。・・・これを持っていけ。」
 エルザードは、溜め息をつきながら納得すると、首飾りをリーアに渡した。
「これは?・・・族長の印!?」
 リーアは、ビックリする。妖精の森の族長の印を渡されたのだ。これは、族長に
だけ渡される神聖な物だった。
「見識に詳しい者ならば、その印を見せれば、分かるはずだ。」
 エルザードは頷く。それだけリーアを信用している証拠だった。
「仕方がない。俺から離れるなよ?」
 ミカルドは舌打ちする。しかし思えば、自分の元に居るのならば、却って安全か
も知れない。その方が、気が楽だった。
「エルザード。その間にも訓練は欠かすな。油断だけは禁物だぞ。」
 ミカルドはエルザードの肩を叩く。
「言われるまでも無いさ。お前も気を付けろよ。」
 エルザードは、ミカルドの心配をする。エルフが魔族の心配をする。それは、稀
有な事でもあった。だが、エルザードは、ミカルドの事を親友だと思っていた。そ
う思うに値する魔族と、初めて認めた異種の者だ。
 こうしてミカルドは『人道』と、同盟を結ぶために、ルクトリアに赴くのだった。
だが、ミカルドは、ジークの死を、この目で確かめたいと言う二つ目の目的も、胸
に秘めていた。ジークを知る者にとって、この訃報は信じられないのであった。


 ルクトリアでは、葬式も終わって、落ち着きを取り戻しつつあった。やはり、英
傑王ライルと、その側近フジーヤの死は、受け入れ難い物があったが、その息子で
あり『人道』の提言者のジークが健在だと言う事実は、人々を安心させるに至った。
 ジークは、ルクトリアの国民にとっても希望なのだ。ルクトリアの国民で、ジー
クを知らない者は、まず居ないと言って良いだろう。その強さと人々の期待度から
言えば、英傑王ライルにも勝るだろう。ここルクトリアで、魔族からの脅威を取り
除いたと言う実績が、光っていると言う事だ。だがライルも、かなり尊敬されてい
ただけに、死は悲しみを増幅された。フジーヤも偏屈者と言われながらも、国を復
興させる時の手腕は、見事な物であったので、その死は深く悔やまれた。
 それを補うのは、フジーヤの息子であり、天才の器と名高いトーリスしか居ない
と考えられている。だが、その前に、代表を決めなければならなかった。最初はジ
ークが、ルクトリアの王を継ぐべきだと言う意見が相次いだが、その意見は白紙に
された。それは、ジークが、闘わなければならない身であったからだ。そのために
は、訓練に集中しなければならない。なので、ジークは仮の処遇と言う事で、ルク
トリアの司令大元帥と言う地位を与えられた。と言っても、これは飽くまで仮であ
る。しかし、それが恙無く行われたのには、訳があった。
 これらの案は、全部、生前のフジーヤが記した物であった。フジーヤの遺言が、
発見されて、草案がビッシリと書き記されていたのには、トーリスも驚いたようだ。
 そして、さらに驚いたのは、王制の廃止である。フジーヤは、生前からライルが
王に就いた時に、この案を考えていたようだ。ジークは、王というタイプでは無い。
それは、ライルにも言えた事だ。それに時代が、王を必要としなくなってきている。
それに見合った政治を、しなければならないと考えていたのだろう。
 そのために編み出された案が、『選政』と言う考え方だった。これは、国民が選
んだ代表が、国を取り仕切って、政治を行うと言う新しい考え方だった。その最高
の地位を、『国事総代表』と呼ぶ事まで定めてあった。そして、利権が集中しては、
王制の復活ともなり得るため、常に監視するための『国事代表』も、国民から選出
すると言う形も取っている。実に新しくはあるが、合理的なシステムで正に『人道』
が、政治を行う上での、良い見本になるだろう事は、間違いが無かった。
 とは言え、これは、まだ国民に公示していない。まだ、時期尚早と判断したのだ
ろう。今は、王の死を悼むのが先だ。なので、この草案を主だったメンバーに、見
せるだけに至った。フジーヤの草案は、良く纏めてあった。
「これを・・・アイツは、一人で考えたと言うのか?・・・凄いな。」
 ルースは、感心していた。フジーヤが夜遅くまで、考えてた秘事とは、これの事
だったのだろう。ルースの他にも、ジーク、サイジン、トーリス、グラウド、エル
ディスに女性陣はレルファ、マレル、アルド、ルイ、ミリィなどが、参加して見て
いた。それと、ジュダと赤毘車も参加した。
「父さんは、昔から、王が率先して行う政治に、限界を感じていたようです。」
 トーリスは説明する。フジーヤの考えそうな事だ。
「なる程な・・・。これは『民主主義』と言う考え方だな。」
 ジュダは聞き慣れない言葉を口にする。
「それは一体?」
 トーリスは説明を求めた。ソクトアの人間達は、その言葉をまだ知らないのだ。
「何て事は無い。今、お前達が草案にしている考え方の事だ。別の星では『民主主
義』。つまり国民が主権と言う意味で、使われていたのを思い出しただけさ。」
 ジュダは、神として他の星にも派遣している。色々知っているようだ。
「国民が主権・・・。正しく、この草案に一致しますね。」
 トーリスは考え込む。
「だが、俺は、口出しするつもりは無い。どう言う法律が作られているか、大概の
事は覚えているが、それを作るのは、お前達の仕事だ。」
 ジュダは、皆に促す。
「分かっています。それに、ソクトアでは『選政』と言う言葉で、公示するつもり
ですからね。父の遺志を、受け継ぎたいと思っています。」
 トーリスは理解していた。ここでジュダが手を加えたら、ソクトアのための政治
では無くなってしまう可能性が高い。それは、避けたい所だった。
「この草案を元に、私が手直しして、皆さんに是非を問います。それまで解散です。」
 トーリスは自分で手直しする事にした。父の草案を、形に出来るのはジュダ達が
手伝わない以上、自分しか居ないと思っていた。
「いよいよ『人道』の政治の基本が、作られるのですね。フジーヤさんは、凄い人
ですな。王制を無くすなんて、私には、考えも付きませんでしたよ。」
 サイジンは深く考える。だが、どうやってもトーリスやフジーヤには、及ばない
だろう。彼らの考えは、自分達の範疇を超えているのだ。
「王制を無くすか・・・。父さんが王になった時、俺が感じた違和感を、フジーヤ
さんも抱いたのかも知れないな。」
 ジークは、フジーヤの案に賛成だった。王と言う地位に縛られていたのでは、行
動を狭める事になり兼ねない。また、行動力の無い王なら、その国は、駄目になっ
てしまう可能性が高い。
 解散の声が掛かった後、マレルは、一人で月を見ていた。考える事はライルの事
ばかりである。こうして日数が経つと、日に日にライルが居なくなった実感を覚え
る。その魂はジークに受け継がれている。だが、マレルにとって、ライルの代わり
は、誰も居ないのだ。
(ライル・・・。ジークを助けたのは礼を言うけど・・・寂しい。)
 マレルはついつい涙が出てしまう。人前では、見せないようにしているが、一人
になると、孤独感が襲う。トーリスも相当耐えているはずである。両親を同時に失
ったのだ。ツィリルが居なければ、レイアの時の二の舞になるかも知れなかった。
(私には、子供が2人共、生きているだけ、良いのかも知れないわね。)
 マレルは、発想の転換をしようとした。そうする事によって、ライルが喜ぶかも
知れない。いつまでも、悲しい顔をしていては、ライルも安心出来ないだろう。
 その時、マレルは後ろから気配を感じた。いや、実際には気配を消している者が
近寄ってきたのだが、マレルは偶然にも気が付いたようだ。
「誰?・・・隠れたのなら人を呼ぶわよ。」
 マレルは警戒する。このルクトリアで、気配を隠す者は居ない。つまり、曲者に
違いなかった。
「随分な挨拶だな。『月の巫女』よ。」
 その者は、声を出した。そしてマレルは、その声を聞いた瞬間、硬直する。
「・・・貴方、彼を知っているのね?」
 マレルは、信じたくなかった。いや、有り得るはずの無い声でもあった。その者
は、間違いなく倒されたはずなのだ。
「俺の名を忘れたか?『月の巫女』よ。いや、覚えているはずだが・・・?」
 その者は、姿を現した。そこに居る者を見て、マレルは驚いた。
「何で貴方が、生きてるのよ!そんなはず無いでしょ!」
 マレルは、つい大声を出してしまう。
「そういきり立つな。無理も無い話だろうがな。」
 その者は、違いなく死んだはずの者であった。
「リチャード・・・。本当に、貴方なの?」
 マレルは睨む。そう。この男は『太陽の皇子』の別名を持つ、リチャード=サン
だった。しかし、ライルに26年も前に倒されたはずである。マレルの定めでは、
このリチャードと結婚しなくては、ならなかった。しかしライルが、その定めを断
ち切ってくれたのである。リチャードは、黒竜王の化身の一族であって、代々、そ
の血を受け継いだ者の一人だった。怒ったリチャードは、黒竜王と変化して、ライ
ルを倒そうとするが、ライルが『怒りの剣』を発動させて、倒したのであった。
「貴方、何で生きてるのよ?」
 マレルは、不思議でたまらなかった。黒竜王は、止めを刺されたはずだ。現に、
魔族などからも、黒竜王を倒したライルとまで言われている程だ。
「蘇生したんだ。・・・と言うのは冗談だ。」
 リチャードは低く笑う。この状況を、楽しんでいるようだ。
「あの時、止めを刺したのは黒竜王だったんだ。黒竜王は死ぬ寸前に、俺をソクト
アの何処かに、飛ばしたんだ。その何処かは、あの島さ。」
 リチャードは、自嘲気味に言う。
「あの島って・・・まさか絶望の島?」
 マレルは、リチャードの様子を見て察する。
「さすがは『月の巫女』。その通りだ。絶望の島レイドだ。」
 リチャードは頷く。絶望の島レイドとは、犯罪者が行き着く島である。そこに送
られた者は、絶対に逃げる事が出来ない、絶望の島。犯罪者達が啜り泣く声が、い
つも聞こえると言う島だ。
「俺は生憎、顔が知れてたからな。回復も受けられずに獄房に入れられたのさ。」
 リチャードは、ライルに斬られた傷で瀕死だった。だが、その回復すら受けられ
ずに、獄房行きだったのだと言う。絶望の島は今は管理人は居ないが、無法者によ
って、絶対に出る事の出来ないシステムを作り上げ、独自の掟で治めている、恐ろ
しい島だった。独裁者によって、全てが封じられた、奴隷のための島だったのだ。
「島主は俺が言うのも何だが、只のクズだったよ。」
 リチャードは、低く笑う。
「だが、クラーデスとか言ったか?あの魔族が、島ごと乗っ取って、俺達は解放さ
れたって訳だ。ほとんどの奴は、クラーデスに付いて行ったが、俺には性に合わな
くてな。」
 リチャードは、解放されると同時に、抜け出して来たのだった。
「クラーデスが・・・絶望の島を乗っ取った何て・・・。」
 マレルは、あり得る話だとは思った。クラーデスの考え方は、ソクトアを新しく
作り変える考え方だ。不満を持ってる奴程、効果はあるだろう。
「で、丁度、流れ着いたのが、この国の港だったってだけの話だ。」
 リチャードは、そのついでに、この城の様子を見に来たのだろう。
「で?貴方は、どうする気なの?」
 マレルは警戒を崩さない。リチャードは、マレルにとって悪い思い出でしか無い。
「さぁな。ソクトアの情勢は、お前達も含めて、空を使っての大々的な宣伝で知っ
ているし、この国の、今の様子は噂話で聞いた。とりあえずライルに挨拶したい。」
 リチャードは、肩の力を抜く。
「どうなってるか、知ってる癖に、嫌味を言いに来たの?」
 マレルは涙を溜める。リチャードに言われると、無性に腹が立つのであった。
「墓前に行かせるくらい、良いだろ?知らない仲じゃ無いしな。」
 リチャードは、溜め息をつく。自分がやった事なので、当然と言えば当然なのだ
が、マレルには嫌われた物だと思う。
「『月の巫女』は手厳しいな。俺は、もうただの中年さ。黒竜王の力が、失せた今
となっては、お前さんの息子には、敵わんよ。」
 リチャードは、ジークの事は知っていた。ライルの若い時に、そっくりだが、信
念の強さは、それ以上の物を感じていた。
「『月の巫女』の名は捨てたわ。もう思い出したくないの。」
 マレルは目を逸らす。
「そうか。ならマレル。ライルの墓前へ、連れてってくれ。」
 リチャードは、どうしてもライルの墓が見たかった。
「何で、そこまで拘るの?」
「どうと言う事は無い。噂だけじゃ、信じたくないだけだ。俺を破った男が、死ん
だと言う事実をな。」
 リチャードは、純粋にそれだけだった。ライルの事は、形はどうあれ、ライバル
だったと思っている。その死は、俄かに信じ難かったのだ。
「父さんなら・・・こっちだよ。」
 突然、声がする。ジークだった。マレルの声が聞こえたので、心配してやってき
たのだろう。ついでにリチャードが出て来たので、見ていたのだ。
「ジーク?来てたの?」
「母さん。もうこの人に、昔の覇気は無いよ。」
 ジークは言ってやった。リチャードは、黒竜王の時の邪悪さが、抜けている。
「お前が生まれた時点で、俺は、もうマレルの事を諦めてるさ。」
 リチャードは率直に言う。最初こそライルの事を憎んだが、時と共に、それも薄
れていった。
「それに、俺は俺で、家族が居るからな。」
 リチャードは、意外な事を話す。
「家族なんて居たの?」
 マレルは、本当に意表を突かれたようだ。
「ああ。養子だけどな。何故か、俺を慕う奴が居てな。追い返すに追い返せなかっ
た。ソイツも一緒に、抜け出してきた。奴とは気が合ったからな。」
 リチャードは、少し嬉しそうな目をしていた。マレルは、人は変われば変わる物
だと思った。あのリチャードが、父親らしき事をして、その事を、嬉しそうに話す
など、考えられなかったのだ。
「今は、大事な用があると言う事で、宿に置いてる。」
 リチャードは、どうやら本当に、ライルの墓に参りに来ただけのようだった。
「もう26年ですものね・・・。貴方も変わったのね。」
 マレルは、やっと警戒の態勢を解く。緊張感のせいか、どっと疲れたようだ。
「リチャードさん。こっちだよ。」
 ジークは、ライルの墓の方へと歩き出す。マレルとリチャードは、それに付いて
行った。そして、ライルの墓に着く。横にはフジーヤの墓もあった。
「・・・こうして見ると虚しい物だ。俺と、あれだけの闘いをやって、勝った男が
死んで、負けた俺が、こんな形で会いに来るなんてな。」
 リチャードは、ライルの墓の文字を見る。そして墓に触る。
「会って、文句でも言いたかったんだがな・・・。まったく、ついてないな・・・。」
 リチャードは下を向く。どうやら、追悼しているようだ。
「・・・これで、心残りは消えた。感謝する。ライルとマレルの息子よ。」
 リチャードは、ジークとマレルに礼を言う。
「父さんは、懐かしがっていると思います。」
 ジークは、ライルの気持ちを代弁する。何となく分かるのだ。ライルなら、リチ
ャードに、こう思うだろうと言う事が・・・。
「そうか。お前は、ライルの魂も継いだんだったな。・・・俺が言うのも、変な話
だが、お前は、死ぬなよ?お前まで死んだら、寂しくなるからな。」
 リチャードは、そう言うとライルの墓に何かを置いていった。そして、微笑むと、
門から出て行こうとする。
「リチャード。貴方、これからどうするの?」
 マレルは、気になった。かつてマレルを攫った男は、もうここには居ない。
「ルクトリアで暮らすさ。時々、息子と来るかも知れん。その時は挨拶くらい頼む。」
 リチャードは、自分も甘くなった物だと思う。しかし、自分の罪を償ったとは、
まだ思っていない。これからは、償いを胸に生きていくのだろう。
「分かったわよ。魔族には、注意しなさいよ。」
 マレルは警告する。
「ああ。・・・それと、お前さんたちの成功を祈ってる。俺も人間だからな。」
 リチャードは、はっきりと『人道』を支持した。リチャードは、もう自分では、
何も手伝えない事は分かっていた。だから、一言も手伝うとは言わなかったのだ。
それ程、ジークは強すぎるし、自分の衰えは隠し切れないのだった。
「ジーク・・・。ライルは喜んでるかしら?」
 マレルは、リチャードの背中を見ながら、ずっと疑問に思っていた。
「さぁね。でも、心残りは消えたと思う。」
 ジークは、ゼロ・ブレイドに手を掛ける。
 ゼロ・ブレイドは、どこか寂しい感じを受けたようだった。
 リチャード=サン。黒竜王の化身はもう見る影が無くなっていた。しかし、以前
より、幸せそうだったのがジークには印象的だった。
 ライルの墓に『太陽の皇子』としての、証拠である印籠が置いてあった。
 それは、リチャードの黒竜王との、決別だったのかも知れない。



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