NOVEL Darkness 6-8(Second)

ソクトア黒の章6巻の8(後半)


 会場分けで、ある程度の優勝予想がされる。勿論、下馬評の高いタッグは、もう
既に優勝候補として、名を連ねている。だが組み合わせ次第では、強いタッグに何
度もぶつかるタッグもある。そうなれば、疲労度も違ってくる。疲労が重なれば、
如何に強いタッグであろうと、足元を掬われかねないのだ。
 そんな中、次々と振り分けが決まってくる。その中にも、かなりの大物が居たが、
人々が注目しているのは、後半に別枠で紹介された面々の組み合わせである。
 とうとう別枠の者達が抽選を引く事になった。紹介順なので、まずはエイディと
葵の組であった。
「エイディ選手!前に!」
 係員が促すと、代表のエイディが前に出る。その横には葵の姿もあった。そして、
完全に視界が遮断された箱の中に入ってあるボールを掴み取るのだ。その色が青の
場合はストリウス、赤の場合はガリウロルだ。エイディは、箱の中を探る。そして、
迷ってもしょうがないので、適当にボールを手にした。
「・・・青だ!ストリウスだな!」
 エイディは、会場に見せ付ける。そして電光掲示板にエイディと葵がストリウス
サイドに行く事を伝える表示が出た。
「さっすがエイディさん!行きたかったんですよー?ストリウス。」
 葵が喜んでいた。大会の移動とは言え、ストリウス観光がしたかったのだろう。
「お前ね・・・。遊びで行くんじゃないんだぞ?」
 エイディは呆れていたが、葵が喜んでいるので、気にしない事にする。
 次に出てきたのは、ジャンとアスカだった。
「ジャン選手!お願いします!」
 係員が、ジャンを呼ぶ。アスカは、ジャンの動向を伺う。ジャンは、これも適当
にボールを探る。まだ振り分けも最初なので、あまり気にする必要は無いだろう。
しかしジャンは、ガリウロルを引きたかった。それは、ケイリーがガリウロルの会
場に居たからだ。どちらの会場にも、元老院が派遣されるのだが、ケイリーは、ガ
リウロルの担当になったのだろう。
「・・・赤だ!此処だな!」
 ジャンは、ガッツポーズをしそうになるのを抑えて、会場に赤いボールを見せた。
「これで、ウチ達は、エイディ達と当たらずに済みそうだね。」
 アスカが、率直な感想を述べる。本当は分かっている。ジャンがどんな想いでボ
ールを引いたのかをだ。しかし余計な事は言わないつもりでいたのだ。
「ああ。ま、どっちも決勝に行くくらいのつもりで、やろうぜ!」
 ジャンは、アスカに明るく返す。アスカが気遣っているのを感じたので、それに
対応したのだ。それに今は、ケイリーの事を考え過ぎないようにしたのだ。
 次にシャドゥとドラムが壇上に上がった。
「シャドゥ選手!お願いします!」
 係員が促すと、シャドゥは、これも無造作にボールを探る。深く考えないように
したのだ。どうせ知り合いが多いので、いずれかと当たると思ったのだろう。
「青だ。ストリウスだ。」
 シャドゥは、会場に見えるようにボールを見せる。
「おう。ストリウスか。やったろうぜ。」
 ドラムは、シャドゥの肩を叩く。このやり取りも慣れた物だった。
 そして次は、電光掲示板の向こう側で、篤則とアルヴァが前に出る。
『篤則選手!お願いします!』
 向こう側の係員が促す。そして篤則は、軽く手を回してからボールを掴む。
『・・・ほう。青だな。ストリウスだ。』
 篤則は、こちら側にも見せ付けるようにボールを見せた。すると、周りがざわめ
き始めた。ストリウスが多いからだ。
 そして次に大二郎が壇上に上がった。
「大二郎選手!どうぞ!」
 係員の促しで、大二郎が無造作にボールを掴み取った。ちなみに、この箱は、中
に『次元』の魔法を掛けてあって、ボールはどっちの会場でも共有している。だか
ら、偏る事は無いのだが・・・。
「・・・む?青じゃな。ストリウスか・・・。」
 大二郎は、さすがに顔を顰める。ストリウスが多いようだ。会場もざわつく。
「・・・ま、良いのでは無いか?どちらでも変わらぬよ。」
 秋月は、会場決めくらいでは動じない。さすがの精神力だった。
 そして士が壇上に上がった。会場は、段々注目し始めていた。
「士選手!お願いします!」
 係員は、良く箱を振ってから士に引かせる。と言っても、『次元』で共有してい
る箱なので、振った所で効果は無いのだが・・・。
「赤だ。ガリウロルだ。」
 士は、手早く取って会場に見せる。会場のざわめきは、少し収まった。
「士、お疲れさマ!ジャンさんやアスカ達と同じ会場になったネ。」
 センリンは、ジャン達の事を気にしていた。
「ま、遅かれ早かれ当たる可能性はあるんだ。気にしない事だな。」
 士は動じない。気にしても、結果は変わらないからだ。
 次にグリードが壇上に上がった。その抽選に注目が集まる。
「グリード選手!お願いします!」
 係員がグリードに箱を向ける。グリードは、少し緊張しながらボールを取った。
「・・・青か。ストリウスだな。」
 グリードは、少し冷や汗を掻きながら見せた。いくら何でもストリウスが多いか
らだ。意図している訳では無い。本当に偶然だろう。
「ストリウスか。一緒に買い物とかしたいな!」
 ゼリンは、全く動じていなかった。ある意味大物だった。多分天然なだけだろう。
 次にミカルドが壇上に上がる。人々は段々注目度が上がってきた。
「ミカルド選手!お願いします!」
 係員に促されて、ミカルドは手早くボールを掴んだ。
「お。ガリウロルだな。赤だ!」
 ミカルドは、会場にボールを見せる。会場は、納得の溜め息を漏らす。
「ちぇー。ガリウロル会場かー。ストリウスに観光に行きたかったぜ。」
 勇樹は、ストリウスに行った事が無かったので、不満を漏らす。暢気な物だった。
 次に毘沙丸が前に出る。ついに神が抽選をする時が来たのだ。
「毘沙丸選手!お願いします!」
 係員は緊張気味に箱を向ける。やはり神だからだろうか?
「・・・ほう。拙はガリウロルか。赤だ。」
 毘沙丸は、赤のボールを会場に見せた。会場は、これで安心する。余りにストリ
ウスが続いたのは、偶然だったようだ。
「毘沙丸様。感謝致します。ストリウスで無くて、ホッとしております。」
 アインは胸を撫で下ろす。ストリウス会場となると、会場から滞在ホテルまで、
かなり距離があると言う情報があったからだ。このガリウロル会場は、シーサイド
なのでシーサイドホテルを使えば、目の前だからだ。
「お主の乗り物酔いも、そろそろ治れば、良いので御座るが・・・。」
 毘沙丸は溜め息を吐く。アインの乗り物酔いは1000年間も治っていない。筋金入
りだ。困った体質であるが、仕方が無い。
 次に修羅が壇上に上がる。すると、人々から歓声が上がる。ガリウロルに金メダ
ルを齎した英雄だからだ。ソクトア選手権の効果は大きい。
「修羅選手!お願いします!」
 係員も、声を弾ませる。修羅は、本能の赴くままにボールを拾い上げる。
「お。青か。ストリウスだな。」
 修羅は会場に見せる。すると、会場は残念そうな溜め息に変わる。修羅がストリ
ウス会場に行ってしまうからだ。
「シュラ!ナイスだ!ストリウス観光のパンフレットが無駄にならずに済んだな!」
 ヒートは、『おいでませ!ストリウス!』と書かれたパンフレットを2、3個持
っていた。行った事が無かったので、行きたかったようだ。
(それに、アルヴァがストリウスだからね。本当にナイスだよ。)
 ヒートはアルヴァとの対決を望んでいたので好都合だった。
 次の抽選の出番になると、一際大きな声援が送られる。巌慈だった。
「サウザンド伊能選手!ど、どうぞ!!」
 係員も、その人気を知ってるらしく、緊張していた。巌慈は、その気持ちを嬉し
く思った。こんな係員にまで好かれるプロレスラーに、なりたかったからだ。
「ガッハッハ!見ろ!青じゃ!サウザンド伊能は、ストリウスに凱旋じゃい!」
 巌慈は、青のボールを高々と上げる。すると、ガリウロルでは溜め息が出て、ス
トリウスでは盛り上がっていた。どうやら魔族の間でも、人気があるらしい。
「巌慈・・・ナイス!私、一回ストリウス行きたかったんだよ!それに・・・。」
 亜理栖が眼鏡を触りながら歓迎する。何せ観光で行きたかったのと、エイディが
ストリウスなので、そちらが良かったからだ。
「アネゴ・・・。俺の気持ちは、知っておろう?・・・まぁ、せめて4人で回ろう
や。楽しく凱旋せんとな。」
 巌慈は、エイディの事を話す亜理栖に少し落ち込むが、気を取り直して、エイデ
ィと葵と一緒に観光に回る事を提案する。
「ま、落とし所は、そんなとこかな?存分に楽しむよ。」
 亜理栖は反対しなかった。巌慈の気持ちも知っているし、エイディとも回りたい
となると、4人で回るしか無かった。エイディ達も、それで良い様だった。
 次に総一郎が壇上に上がった。観客は、またしてもストリウスが多くなってきた
ので、注目度が上がってきた。
「総一郎選手!どうぞ!」
 係員は、総一郎に箱を向ける。少し緊張気味だった。
「・・・おやおや・・・。偶然とは怖いな。青だ。ストリウスだ。」
 総一郎も分かっていたようで、会場に見せるように青のボールを見せる。会場は
またしても、ざわつき始める。
「頭領、ストリウス道場へ連絡しておきますね。」
 冬野は早速、ストリウスにある榊流道場に携帯電話で連絡を入れる。
 次は、ストリウス会場が盛り上がる。どうやら健蔵が引くようだ。
『健蔵選手!お願いします!』
 係員は、堂々と健蔵に対して言う。それを見て健蔵は、少し笑いながら引いてい
た。昔なら、疎まれるか恐れられるかばかりだったからだ。
『ほほう。赤だな。ガリウロルだ!』
 健蔵は、声が上ずる。何故か分からないが、物凄く嬉しそうだった。
『健蔵さん!『サキョアニ』への見学、行きましょうね!!』
『馬鹿!そんなでかい声で言うな!』
 メイジェスの声に健蔵は恥ずかしそうにしていた。その声を聞いて、人々は笑っ
ていた。丸くなった物である。どうやら『サキョウアニメーション』に見学に行き
たいようだ。魔族の間でも流行っているのだ。
 次に、扇が壇上に上がる。扇は、周りを威圧するかのように鋭い目付きで見る。
「扇選手!お願いします!」
 係員は、堂々と扇に促す。それを見て扇は、鍛えられていると思った。
「・・・何だ。赤だな。此処のようだ。」
 扇は、赤いボールを見せた。確率的に言えば、ストリウスのボールは、数少ない
ので、赤になる確率は高くて当然だった。
「扇様。お疲れ様です。後は、奴らの出方ですな。」
 風見が、瞬と江里香の方をチラッと見る。過去の因縁は、この前の闘いで決着し
たが、それとは別に瞬と闘いたがっていたからだ。
 次に、ネイガが壇上に上がる。ネイガは鳳凰神として、堂々と壇上に上がった。
「ネイガ選手!お願いします!」
 係員は、平伏しそうになったが、ボールを促す。
「・・・ほう。青だ。随分と続く物だな。」
 ネイガは、青いボールを見せる。数少ない筈のストリウスを引き当てたのだ。人
々は、驚きの声を上げた。
「ネイガ殿。我等は・・・ストリウスですな。この際、楽しみましょうぞ。」
 ショアンは、ストリウスに行った事が無かったので、少し楽しみのようだ。だが、
睦月がガリウロル会場の審判なので、残念そうにしていた。
 次に電光掲示板が光る。どうやらワイスが壇上に上がったようだ。
『ワイス選手!お願いします!!』
 係員は、その雰囲気だけで、呑まれそうになっていたが、何とか持ち直す。
『・・・フム。ほう。赤だな。ガリウロルである。』
 ワイスは赤いボールを見せる。すると、ストリウスの会場からは、嘆きの声が聞
こえる。魔族からの人気が高いからだろう。
『ご苦労様です。ワイス様。』
『フッ。良かったな。お主も健蔵と共に、見学に行くと良いぞ。』
 ハイネスの迎えに対し、ワイスはからかう様に声を掛ける。要は、『サキョアニ』
に見学に行く話であろう。ハイネスは、かなり恥ずかしそうにしていたが、内心は
嬉しかったようだ。
 次に壇上に上がったのは、赤毘車だった。凛々しい出で立ちだった。
「赤毘車選手!お願いします!」
 係員は、赤毘車に対して、かなり緊張気味に箱を差し向ける。
「どれ・・・。お。赤だな。ガリウロルだ。」
 赤毘車は、自分の名前にある色を引き当てる。縁起が良いと思っていた。
「赤毘車さん、お疲れ様です。後は瞬さんが、こっちだと良いんですがね。」
 葉月は、『闘式』で瞬に自分の想いをぶつけるのが目的だ。しかし、この会場分
けで別々になってしまっては、闘う確率は大きく下がる。
「こっちになる事を祈ろうか。」
 赤毘車は、その想いを知っているので、葉月の願い通りにさせたいと思っていた。
 次に出て来たのは、ジュダだった。会場は、一際大きな声援が流れる。
「ジュダ選手!ど、どうぞ!」
 係員は、つい声が上ずる。無理も無い。目の前に神のリーダーが居るのだから。
「んー。・・・お。ストリウスか。」
 ジュダも数少ない筈のストリウスを引き当てた。
「ジュダさん、俺達もストリウスですね。って事は、葵もストリウスだし、莉奈も
連れて観光ですかね?・・・他国の観光ってのも良いですね。」
 魁が勝手に盛り上がっていた。
「ま、楽しめ楽しめ。試合では、キッチリ働いてもらうけどな。」
 ジュダは、楽しむのは構わないが、試合はキッチリ頑張ってもらうつもりでいた。
「分かってますって。ま、ルードにも他国を見せてやりたいですしね。」
 魁は、莉奈とルードを連れて、ちゃんと観光させようと思っていた。
 そして、次の抽選が始まる。電光掲示板が盛り上がっていた。どうやら、ケイオ
スが引く番のようである。と、ここで電光掲示板を見た観客が、ざわつき始める。
 何と、あと4チーム残っているが、青いボールが後1個しか無いと表示されてい
たのだ。つまり、誰かがストリウスを引けば、そこで終わりらしい。
『ケ、ケイオス選手!お願いします!』
 係員は、ケイオスの圧力と、ボールの行方が気になるのか、少し声を震わせなが
ら、ケイオスの前に箱を突き出す。
『フム・・・。ぬ?・・・赤か。ガリウロルのようだな。』
 ケイオスは、どちらでも良いらしく、特に感情を表したりはしていなかったが、
ガリウロルの方が、面白い対戦者が多いと思っていた。
『ガリウロルけ?どうやら此方等は、皆ガリウロルのようじゃの?』
 エイハが、楽しそうに指摘する。確かに『覇道』を提唱する魔族の者達は、ガリ
ウロルに決まったようだ。
『どちらでも構わぬ。どんな組み合わせであろうとも、余が勝てば良いだけだ。』
 ケイオスは、余裕だった。どんなにキツイ組み合わせだろうと、自分が勝つと疑
ってないようだ。さすがは『覇道』を提唱するだけある。
 そして、ついにレイクの出番になった。ボールは後3つだ。ここでストリウスを
引けば、残るチームは、どちらもガリウロルになる。
「レイク選手!お願いします!」
 係員も分かっているらしく、気合の入った声になる。こうなると、レイクも緊張
してくる。とは言え、考えてもしょうがないので、運に天を任せる事にした。
「悪いな。これで決まりだ。青だ!ストリウスだ!」
 レイクは、青いボールを見せた。どうやら、これで全部決まったようだ。
「これでストリウスね。ま、乗り込んでやりましょうか。」
 ファリアは余裕であった。しかし、望んだ結果だった。何故なら、倒すべき相手
がストリウスに居るからだ。それは、シンマインドの化身の篤則である。
「ストリウスか・・・。初めて行くし、丁度良いな。」
 レイクは、ストリウスは、勿論初めてであった。なので、楽しみにする。
「あちゃー。俺もボール引きたかったけど、しょうがないですね。決勝で会いまし
ょう!レイクさん!」
 瞬が声を掛けてくる。必然的に瞬がレイクと当たるには、決勝でしかない。しか
し、勝ち抜く可能性は、無い訳では無い。
「あーら。私に勝てるつもりですか?兄様。」
 恵が、聞き逃さなかった。決勝でレイクと会うと言う事は、恵にも勝つと言う事
だ。しかし、簡単に決勝進出を許す恵では無い。
「決勝の話も良いけど、まずは、倒すべき相手が居るからね。それからだよ。」
 俊男は、ケイオスを意識していた。俊男にとっては、瞬もそうだが、ケイオスに
は、絶対に勝たなくてはならない。
「ま、このメンバーで決勝戦をやれるように、全力を尽くさなくちゃね。」
 江里香は、それを願っていた。勿論不可能では無い。此処に居る6人は、それを
軽く言える程、実力を秘めたメンバーなのだ。江里香だって、今の実力なら、足手
纏いになどならない自信がある。
「当然ですわ。だからファリアさん。それにレイクさん。そっちは頼んだわよ?」
 恵は、当然と言う風に返す。この自信は、さすがであった。そして、ストリウス
の勝ち残りは、レイクとファリアだと、指定する。
「さすが言うわね。ま、全てを出し尽くすわ。それで安心?」
 ファリアは、恵の言う事をサラリと返す。その時点でも余裕が伺える。
「安心ですよ。俺達も、やるしかないな。・・・恵、俊男。当たった時は、互いに
恨みっこ無しだぜ?」
 瞬は、恵と俊男に全力で闘う事を誓う。
「当たり前だよ。どっちか勝った方が、優勝だよ?」
 俊男も、それを受ける。勝ち進んだ方が優勝すると言う決意を表す。
「言うわね。トシ君。ま、私と当たったら、修行の成果を見せてあげるわよ?」
 江里香も言うだけの修行をしてきた自覚がある。だからこその台詞だ。
「それは楽しみですわ。兄様も江里香先輩も、私に簡単に勝てると思わないで下さ
いね。知っての通り、負けるのは苦手ですので。」
 恵は、独特の言い回しで決闘を宣言する。
「よーし。決勝で会おうぜ!」
 レイクは、嬉しくなったのか、決勝進出宣言をする。
 こうして、波乱の幕開けとなる会場分けが、終わったのであった。


 続いて、運命のグループ分けが行われる。会場移動はまだだったが、さっきの会
場分けで、それぞれどっちの会場かは分かっているので、それぞれが、番号の書い
たボールを引いていくのである。
 ここでも、色々盛り上がりがあったが、人々が注目しているのは、やはり後半の
出場者である。本戦出場の可能性が高い出場者達だが、注目のチームが22チーム
あるのだが、本戦出場は両会場合わせて16グループの勝者である。しかも予選で
あるグループでの闘いは、バトルロイヤルで行われる。各グループに6チームほど
振り分けられるので、他の5チームから狙われたら、不利である。
 そう言う意味でも、このグループ分けは重要だった。
 そして、グループ分けも後半に差し掛かる。とうとう主要チームの振り分けが始
まった。これだけは、対戦者を意識せざるを得ない。
 まずは、エイディがストリウス会場用のボールが入った箱に手を入れた。この瞬
間は、どんな人も緊張する物だ。何処の枠も、まだ1つ以上余っている。つまり、
この主要チームが入らないグループは無いと言う事だ。
「・・・ち。余り縁起良くは無いな。4番だ!」
 エイディは舌打ちする。4と9は、ガリウロルでは縁起が良くないとされている。
それに4番は、もう1枠空いていた。つまり、もう1チーム、主要チームから選ば
れるのが確実だ。余り良い番号では無かった。
「避けたかったですけどねぇ・・・。まぁ、頑張りましょう。」
 葵も、その意味は分かっている。だから、残念そうだったが、頭を切り替えてい
た。当たったチームと全力で闘うしかないのだ。
 次にジャンがボールを手に取る。ガリウロルと書かれた箱からだ。
「・・・さーて、何番かな?・・・6番か。あちゃー・・・。」
 ジャンも頭を抱える。6番も余り良い番号では無い。縁起とかでは無く、もう1
枠空いていると言う意味でだ。しかもガリウロルは結構強敵が多い。出来れば引き
たくない番号だった。
「ま、仕方ないよ。頑張ろうよ!ジャン!ウチも頑張るからさ!」
 アスカが励ます。決まってしまった物は仕方が無い。やるしかなかった。
 次にシャドゥがストリウスと書かれた箱に、手を突っ込んだ。出来れば、4番は
避けたいと考えているようだ。予選からエイディと当たりたくは無いだろう。
「・・・む。1番か。一安心だな。」
 シャドゥは、ひとまず安心する。1番は主要チームが入り込む隙が無い。つまり、
本戦出場の可能性が高いからだ。何より仲間達と当たらないで済むからだ。
「おいおい。他の1番の参加者に失礼じゃねーの?油断はしねーようにな。」
 ドラムが注意を促す。全く持ってその通りだった。油断するのは、一番の命取り
だ。どんな強敵が出てくるか分からないのだ。
「その通りだな。気を引き締めなくては。」
 シャドゥは、反論出来なかった。この『闘式』は、そんな甘い大会じゃないから
だ。本戦出場が確約されているチームなど、存在しないのだ。
 次に電光掲示板で篤則がストリウスと書かれた箱に手を伸ばす。ちなみに、この
箱も、さっきの会場分けの箱と一緒で、両会場で共有している。なので、重なる心
配は無い。この仕掛けを作るのに、ファリアは四苦八苦したので苦労の賜物だった。
『・・・ち。6番だ。』
 篤則は舌打ちする。ストリウスの6番も、ガリウロルの6番と一緒で、もう1枠
余っていたからだ。本戦に出場するのに、無駄な労力を使わなければならない。
『ま、仕方ないね。セント代表として、やるしかないですよ。』
 アルヴァは、篤則の様子を見て、軽く返す。飄々としていた。
 次に出て来たのは、大二郎だった。一条流空手の刺繍が入った腕を見せ付ける。
ストリウスと書かれた箱に手を突っ込んだ。
「ふむ・・・。5番じゃな。・・・ほうほう。」
 大二郎は、1枠しかない5番を引き当てる。しかし、このグループを勝ち抜いた
としても、6番の勝者と闘う事になる。つまり、今決まった篤則達と闘うかも知れ
ないのだ。正直、篤則達は得体が知れないので、警戒していた。
「これは、本戦まで勝ち抜くしかないのう?」
 秋月は意に介さず、ただ勝ち抜くだけだと思っているようだ。
 そして次は、士の番だった。ガリウロルの箱に手を伸ばす。最初に6番を引かな
いように、祈っていた。初戦から、ジャンと当たりたくは無いだろう。
「・・・お。7番か。ま、無難な所だな。」
 士は、まずは胸を撫で下ろす。7番は1枠しかない。しかもジャンと当たるには、
準決勝しかない。先送りではあるが、仲間同士の潰し合いは避けられたようだ。
「さっすが士だヨ。でも、此処を当てたからには、勝ち上がらないとネ。」
 センリンは、こう言う所を引き当てたからこそ、無様な負けは許されないと思っ
ているようだ。士もそう思っていた。
 次はグリードの番だった。段々ストリウスの枠が埋まっていくのを見て、緊張が
高まる。この瞬間ばかりは、祈るしかない。とりあえず、4番は避けたいと思って
いた。いきなりエイディとは当たりたくない。
「ええーと。8・・・8番だ!」
 グリードは、8番のボールを引き当てた。ここも1枠しかない。
「8番か。7番は誰が来るんだろうね?」
 ゼリンは、既に7番の相手の心配をしていた。8番のグループの事など、気にも
留めていない。図太いと思われがちだが、単に天然なだけだった。
 次にミカルドがガリウロルの箱に手を伸ばした。6番を引くと、いきなりジャン
と対戦である。勇樹は、当たりたくないと思っていた。
「お。これは2番だな。まぁまぁか?」
 ミカルドは、2番だった。勇樹はホッとする。いきなりジャンと当たる事は無さ
そうだ。しかしそうなると、勝ち抜かなくてはならないし、1番の相手が気になる
所だった。仲間達とは当たりたくないと思ったが、逆に闘ってみたいとも思った。
「羅刹拳の真髄、見せましょうよ!」
 勇樹としては、それが一番だった。やはり、羅刹拳の認知度を広めたい。
 次に毘沙丸がガリウロルの箱に手を伸ばした。余計な事は考えずに引く事にした。
雑念が入ると、嫌な結果になるからだ。
「ほう。拙は3番か。誰と当たるか、楽しみで御座るな。」
 毘沙丸は動じない。3番は、もう1枠空いていたので、余り良い番号では無い。
だが、それを嘆いても仕方が無い。
「誰が来ても、このアイン、闘い抜く所存であります。」
 アインは、3番と言う結果は、余り良くないと思ったが、それだけ遣り甲斐があ
ると思えば、苦になる事も無かった。要は、誰が来るかである。
 次に修羅がストリウスの箱に手を伸ばす。4番だと、いきなりエイディと当たる。
それは避けたいと考えていた。
「・・・む!・・・そうか・・・。6番だ。」
 修羅は、緊張する。6番を引き当てたのだ。その瞬間、会場にも緊張が走った。
6番は篤則とアルヴァのペアだ。
「さすがシュラだね。ボクの望み通りの番号だよ。」
 ヒートは、嬉しそうだった。何せ望んでいた闘いになったからだ。ヒートはアル
ヴァとの闘いを望んでいた。予選だが、いきなり全力で闘える。
(レオは、このアルヴァと闘いたがっていたな。となると、俺の相手は・・・必然
的に、あの篤則になる訳だ・・・。確かシンマインド・・・。)
 修羅は、天神家で教えられた情報を思い出す。それが真実なら修羅は、この時代
を作った元凶と闘う事になるのだ。
(のっけから、妙な役を押し付けられた物だ。まぁ良い。俺は俺のやり方で、倒し
て見せるだけだ。瞬や俊男ばかりに任せてられないからな。少しは先輩らしい所を
見せてやらなきゃならん。)
 修羅は、こう見えて気にしていたのだ。瞬や俊男が命を懸けて闘っているのに、
自分は何もしていない事をだ。だからこそ、ソクトア選手権が終わった後の、この
大会で、自分の闘志を懸けて闘いたいと思ったのだ。
 次の出番になると、会場は盛り上がる。巌慈の出番だった。サウザンド伊能とし
て、どの番号を引く事になるのか、気になる人が多いようだ。ストリウスの箱に手
を伸ばす。運に天を任せて、引いてみた。
「おう!3番じゃ!」
 巌慈は、3番を引いたのだ。すると、亜理栖に緊張が走った。
「良い番号じゃないか。巌慈。」
 亜理栖は、意識していた。ストリウスの3番は、最後の1枠だったが、勝ち抜け
ば、ストリウスの4番の勝者と対戦する事になる。そして、そのストリウスの4番
を引いたのは、エイディと葵の組だった。
「こりゃ、因縁かのう?やるしかないわな。」
 巌慈は、どちらにせよエイディとは、決着を付けなくてはならない。勿論それは、
亜理栖も一緒だ。なので、早い段階で決着が付くのは、望む所だ。
 とは言え、どちらも本選に進まなければ意味が無い。それは、分かっている。
 次に総一郎が壇上に上がった。総一郎は、特に考えなど無かった。引いてみてか
ら、対策を考えるつもりでいた。ストリウスの箱に手を伸ばした。
「・・・む!!・・・そう来たか。4番だ!!」
 総一郎は気合を入れる。ストリウスの4番だった。その番号は、正に因縁の番号
だった。エイディと葵の組の番号であった。
「頭領、キツイ所引きますねぇ・・・。ま、フォローはしますよ。」
 さすがの冬野も、この結果には、呆れていた。同門のエイディとの対決だ。しか
も、エイディに勝った所で、次に当たるのは、恐らく亜理栖達だ。
「ま、最悪でも誰かは、ベスト8まで行けると思えば良いでは無いか。物は考えよ
うだぞ?冬野。無論、私は勝つつもりで行くがな。」
 総一郎は、考えを変えろと言った。この組み合わせなら、思った通りに本選にさ
え行ければ、誰かはベスト8まで勝ち進む事が出来るのだ。
 今度は電光掲示板がアップになる。健蔵が引くようだ。健蔵は、何処でも良いと
思っていた。やれる事をやるだけだ。ガリウロルの箱に手を伸ばす。
『ふむ。5番だな。』
 健蔵は、5番のボールを会場に見せた。つまり、本選に勝ち進めば、最初に当た
る相手は、ジャンとアスカになるかも知れないのだ。
『健蔵さん。お疲れですー。』
 メイジェスは、知ってか知らずか、健蔵を労っていた。
 一方のジャンとアスカは、戦慄を覚えていた。いくら予選で勝った所で、いきな
り当たる相手は、健蔵とメイジェスだからだ。これは手強い。
 次に扇がガリウロルの箱の前に来る。扇にとって見れば、皆が敵である。とりあ
えず引いてみるしかないと思っていた。
「ほう。4番だな。面白い。」
 扇は、少しでも闘いたかったので、4番は縁起が良いと思っていた。4番は、も
う1枠空いているので、いきなり強敵と当たる可能性が高いからだ。
「お疲れ様です。扇様。4番とは、幸先が良いですな。」
 さすが風見である。扇の考えを見通していた。タッグを組んだのは、正解だった
と思った。風見は補佐として、かなり優秀であった。
 一方、当たる可能性が高い毘沙丸とアインは、扇の方を見る。
(確か、『疾風』とか言うルールの使い手であったな・・・。)
 毘沙丸は、ちゃんとチェックしていた。
 次にネイガが前に出た。ストリウスの箱に手を伸ばす。
「ぬ・・・。7番か。中々面白げな所になったな。」
 ネイガは、素直な感想を漏らす。7番はもう1枠余っている。強敵とぶつかる可
能性が高い。それに、本選に進んだ所で、当たるのは、グリードとゼリンの組だ。
「難しい所ですな。でも、全力で当たりましょう!」
 ショアンは、自分が何処まで勝ち抜けるか分からない。こうなったら、行ける所
まで行くだけだと思っていた。
「参ったな。これでは勝っても、いきなり父上と当たってしまうな。」
 ゼリンが、溜め息を吐く。出来れば、早い段階で当たりたくは無かったようだ。
「まだ分からないぜ?あっちは、もう1枠余ってるじゃねーか。」
 グリードは、気を引き締めさせる。7番は、もう1枠余っている。ここに凄い奴
が入ったら、もしかしたらネイガも負けるかも知れないからだ。
「父上は強いんだぞ?そう簡単には負けないと思うよ?」
 ゼリンは、義父であるネイガが馬鹿にされてると思ったのか、頬を膨らませる。
「まぁ、そうだな。ネイガさん、物凄く強いしな・・・。」
 グリードも、それ以上は言わなかった。しかし、残ってる面子が恐ろしいから、
気を引き締めさせたのだ。だが、ネイガも神だし、早々負けないだろう。
 次に大きな声援が飛ぶ。ストリウス会場では、ワイスがガリウロルの箱に手を伸
ばした。ワイスは、無造作にボールを引いた。
『・・・面白い・・・。6番だ!』
 ワイスは、声を高らかにして宣言する。すると、会場は大いに湧いた。それはそ
うである。6番は激戦区だ。まずは予選でジャンとアスカと当たる。そして、勝ち
抜いた所で、来るのは健蔵とメイジェス組である。
『これは、全力で当たるしかないようですね。』
 ハイネスも、気合が入っていた。この中で勝ち抜いて見せるのは、至難の業だ。
それだけに、勝ち抜きたいと思っているのだ。
『フハハハハ!ワイス様!本選で会いましょう!』
 健蔵は嬉しそうに叫ぶ。早い段階で、当たりたいと思っていたからだ。予選は突
破したいが、本選の1回目で当たるなら、本望である。
『健蔵よ。その気持ちは嬉しいがな。我だけをマークするのは、些か軽率だぞ?我
の相手とて、一筋縄行かぬ相手ぞ。・・・のう?』
 ワイスは、そう言うと電光掲示板越しに、ジャンを見詰める。
「参ったぜ・・・。全く・・・。いや、やるしかねぇよな・・・。」
 ジャンは、頭を抱えたくなった。予選の1回目で当たるような相手じゃない。何
せ伝記の時代にジーク達を、一回は圧倒したと言う、『神魔』ワイスだ。
「ジャン。頑張ろうよ!ウチ、ジャンと一緒なら怖くないよ!」
 アスカは、恐怖で足が震えそうなのを、ジャンを見る事で、押さえ込んでいた。
「姐さん・・・。そうだな・・・。どうせ、失う物は何も無いんだ!思いっきりぶ
つかろうぜ!それが、俺達の生き方だったな!」
 ジャンは、アスカに勇気付けられる。愚痴愚痴考えても仕方が無いのだ。当たっ
てしまったのなら、やるしかないのだ。
(ジャンも、大変だな・・・。ま、俺も気を引き締めないとな。)
 士は、ジャンの事を気遣ったが、冷静に考えても、ジャンが勝ち抜ける確率は少
なかった。ならば、思いっきり闘って欲しいと思った。そして、そう言う意味では、
ジャンは良い相手に当たったと言えた。ワイスならば、力を出し尽くせる相手だ。
 次に赤毘車が前に出た。さっきは、盛り上がりを見せていたので、それに負けな
い所を引き当てるべきか?と、前向きに考える。ガリウロルの箱に手を伸ばす。
「・・・おやおや・・・。これは参った物だ。3番だ!」
 赤毘車も、高らかに宣言する。すると会場は、驚きの声でざわめき始めた。予選
で、いきなり赤毘車と毘沙丸が当たるみたいである。二人が親子だと言う情報は、
パンフレットにも書かれている。
「赤毘車さーん・・・。いきなりですかぁ?んもう・・・。」
 葉月は、大きな溜め息を吐いた。そりゃ瞬と当たる為には、誰にも負けてはいけ
ないと言う覚悟はある。だが予選で、こんな大物と当たるなんて、さすがについて
ないと思う。アインだって強いのを知っているからだ。
「ま、許せ。お前には悪いが、私は少し楽しみでな。」
 赤毘車は、不謹慎ながらも楽しみにしていた。毘沙丸が、どれほど強いのか。確
かめるチャンスである。アインの補佐振りも見たかったのだ。
「拙の相手は、母上か・・・。これは、本気を見せる他、無いで御座るな!」
 毘沙丸も相手が赤毘車と言う事で、燃えるような眼をしていた。
「赤毘車様、そして葉月さん。胸を借りるつもりで行きますよ!」
 アインも、毘沙丸のパートナーとして、全力で補佐する事を誓う。
「おー。盛りあがってんな!見せてくれるねぇ。赤毘車。俺も盛り上げるか!」
 ジュダが前に出る。妙な対抗意識を燃やしていた。
「ジュ、ジュダさん!変な対抗意識は、要らないですからね!」
 パートナーである魁は、いまいち不安だった。ジュダは、意地悪そうに笑うと、
ストリウスの箱に手を伸ばした。
「・・・ビンゴ!覚悟しろよ?7番だ!」
 ジュダが思いっきり良い声で宣言した。そして、その番号は・・・。
「ああ。もうね・・・。予感はしてたんですよ?俺・・・。」
 魁が嘆くのも無理は無い。その番号の相手は、よりにもよってネイガとショアン
の組だったからだ。手強いなんて物じゃない。会場は、赤毘車以上に盛り上がる。
ジュダとネイガの試合である。現在、5大神と言われているジュダとネイガの直接
対決である。予選のカードじゃない。
「ジュダ様とか・・・。これは、御無礼は禁物だな。全力でやるぞ!ショアン!」
 ネイガは勿論、真正面から受けて立つつもりだった。相手にとって不足は無い。
いや、寧ろ相手に、そう感じさせない様に、しなければならない相手だ。
「ジュダさんに魁か・・・。参りましたな。修行の成果を、隅々まで見せなければ
ならんようで御座りまするな。」
 ショアンも燃えていた。予選から分からなくなった。それは、不幸な事では無い。
「私は別に、此処まで盛り上げろとは、言って無いんだがな。」
 赤毘車は、苦笑いをする。まさかジュダとネイガだとは思わなかったからだ。
 そして、この瞬間、レイク達の番号も決まったのだった。
「そうか。俺達は2番か。って事は、予選を勝ち抜いたら・・・。」
 レイクは、意識をする。2番と言う事は、1番の相手と当たる。そして1番のボ
ールは、シャドゥが引き当てている。
「決まったわねー。本選まで行ったら、シャドゥさんとドラムさんかぁ。ま、やる
しかないわね。ナイアには悪いけど、勝ちに行くわ。」
 ファリアは、友人の名前を口にする。シャドゥとは、早い段階で当たりたくなか
ったが、これも運命だ。仕方が無い。当たったからには、全力で勝ちに行くだけだ。
「レイク・・・。お前の成長を、見せてもらうぞ。本気のお前をな・・・。」
 シャドゥは、今のレイクの本気を見てみたかった。レイクは技だけで、あのゼハ
ーンに勝ったと言う。その実力を見てみたかったのだ。
「かー。いきなり優勝候補とかよ!良いねぇ!燃えるぜぇ!」
 ドラムも、望む所だった。しかも前世の記憶では、あのファリアの祖先には可愛
がってもらった記憶がある。その恩に報いる為にも、成長を見せなければならない
と思っていた。それが、ドラムの恩の報い方だった。
 しかし今度は、向こうの会場も盛り上がる。今度はケイオスの番だからだ。ケイ
オスは、さっきの盛り上がりを見て、面白いと思いながら、ガリウロルの箱に手を
伸ばした。何処になるか楽しみだった。
『む?8番か。成程な。・・・悪くない。』
 ケイオスは、8番だった。8番は特に要注意するべき相手は居ない。だが、勝ち
抜いた先に、面白い相手が居た。それは、士だった。
『御方様。これは、早い段階で『神魔王』とぶつかりそうですじゃ。』
 エイハは、士の中に宿るグロバスの事を意識する。先の『神魔王』と、『神魔』
であるケイオスの闘いは、知る人ぞ知る好カードだった。
「チッ。さすがに楽じゃねぇな。・・・やるしかねぇな。」
 士も意味は分かっていた。ケイオスの強さは、肌で感じた事がある。あれは、グ
ロバスを超えるかも知れない化け物だ。
「士!私も、フォローするヨ!目に物を見せてやろうヨ!」
 センリンは、本当は怖い筈だ。魔族の大ボスが相手だ。怖くない筈が無い。しか
し、弱音を吐かないようにしているのだ。
「ま、誰が相手でも、強敵な事には、代わり無いんだ。俺達の誇りってのを、見せ
てやろうぜ。」
 士は、センリンの為にも、負けられないなと思った。
 そして、最後のボールが引かれようとしていた。瞬達である。瞬が引けば、自動
的に恵達の番号も決まる。1番か4番だった。
「ま、やるしかないな。えい!・・・4番か!」
 瞬は4番を引いたのだった。そして4番は、言うまでも無く扇達だった。
「瞬君も、相変わらずの運ね。ま、付き合ってあげるわ。」
 江里香は、こう言う事は初めてでは無いので、付き合うだけだと思っている。4
番の方が激戦だったからだ。しかし関係ない。勝ち抜けば良いだけの話だ。
「クックック。予選からとは、運があるな。」
 扇は、楽しくて仕方が無かった。いきなり瞬と決着が付けられる。それは、楽し
くて仕方が無かったようだ。
「相手に不足はありませんな。行きましょう!」
 風見も瞬を意識する。因縁の天神家と神城家の対決に、会場は大いに盛り上がる。
 そして、この瞬間、恵と俊男の番号も決まったのだった。
「んー。1番ね。ま、無難な所かしらね。予選なんかで負けてられないわよ?」
 恵は、俊男をからかう。元々予選で負けるつもりなど無い。
「当然。やるからには、優勝!だよね?勝ち抜けば、次はミカルドさんと勇樹だ。」
 俊男は、ミカルドと勇樹を意識する。
「あの組、滅茶苦茶強いんだろ?楽しみだな。」
 ミカルドは、勇樹に尋ねる。優勝候補と言われているが、ミカルドは細かい実力
を知らないのだ。無理も無い。
「ハッキリ言って、全力でぶつかるしかない相手です。ヘッ。上等だよ。あの時の
俺とは、訳が違うって所を、見せますよ!」
 勇樹は、予選を突破して当たる相手が、瞬と江里香のタッグか、恵と俊男のタッ
グかだったので、どっちが来てもやるしかないと思っていた。そして、より強いと
思っていた方と当たったのだ。この二人の場合、どちらも一人で勝ち抜けるくらい
強い。参った物だと思う。でもやるしか無かった。
 これで、全ての組み合わせが決まった。それぞれ、思う所はある。
 だが、この組み合わせになったのは、言うなれば運命だろう。
 より、闘いたいと思っていた相手と当たる様になっていた。
 それを全て含めて、『闘式』なのだ。
 ソクトア暦2042年、5月1日。
 歴史的な大会が、遂に始まったのだった・・・。



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