1. 自動車教習所

1.1.     ポスティング

2003年6月のある日、帰宅して郵便ポストを見ると、自動車教習所のチラシが入っていた。投げ込みである。

通勤電車から見える、河川敷にある教習所だった。車内広告もよく見かけたから、大型二輪のコースがあることも、結構夜遅くまで教習が受けられることも知っていた。

ポスティングというのは、一般にヒット率が低いといわれる。ターゲットを絞っていないのだから当然である。たとえば、我が家のポストに、「使い捨てコンタクトレンズ超特価」のチラシが入っても、コンタクトレンズの使用者がいないので、購入には結びつかない。

それでも私は、ひっかかってしまった。大型二輪の免許を取ろうかどうしようか、ちょうど悩んでいたところだったし、通うとなったら、通勤経路の途中にある、あの河川敷の教習所以外はムリだろうと考えていたまさにその時だったから。

私の運命は、ポスティングが偶然にヒットする、ごくわずかな確率で動き出したのだった。生まれて初めて、投げ込みチラシのはがき部分をチョキチョキと切り取り、住所氏名や希望車種を書いて投函した。

程なく、教習所から、大型二輪の教習パンフレットや料金表が送付されてきた。

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