豚に真珠

北村曉


 20**年、地球の各地で相次いで人が行方不明になる事件が起こった。被害者に共通する特徴として、年齢は中高年齢で、最近体の不調を訴えるものが多かったと言うことが分かったが、他には手掛かりは何もなく、各国の警察は対応に頭を痛めているそうである。

 その頃、月の近くではこんな会話が交わされていた。
「ああ、この輝き! 何と素晴らしい!」
「隊長、こちらの奴もなかなかですぜ」
「ううむ、色といい形といい、また違った趣があるな」
「全く思わぬ所に宝の山がありましたな」
「確かに、これだけの物は我々の星系でもまず見つかるまい」
「もう少し大きな物は無かったのか?」
「この惑星の生き物は少しは智慧があるようで、この石が大きくなると自分達で取り出してしまうらしいですよ」
「石はどうするのだ?」
「さあ。捨てるんじゃないですか?」
「何と! この石の美しさが分からんとは……」
「我々とあいつらの美意識の違いってやつですかね」
「まあよい。とにかくこれを故郷で売って大儲けだ。早速帰るぞ」
「了解」
「ちょっと待て。他の業者にこの場所を知られたらまずい。回り道をして帰ろう」
「あっなるほど。さすが隊長。分かりました」
 側には腹を割かれたこの惑星の生き物の体が山積みになっていた。

 こうしてモケモケ星人の海人(あま)さんたちを乗せた真珠取りの舟は帰っていった。■

(1992年作品)





撰者から:

 これが北村が初めて書いた話である。体の中にできる結石を宝石として珍重する宇宙人を描いたつもりだったが、敢えてはっきり書かなかったのが裏目に出て、オチが分かりにくいという意見もあったらしい。