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「エディ」

 

 私のベッドは東の窓に面していた。午前中は陽があたり、

冬から春にかけて眠たがりの私に心地よいひとときをくれた。

 そんなうららかな休みの朝、布団の上をちっちゃな四つ足が

踏みつけてゆく。

 実家(うち)の隣は「エディ」というトラ猫を飼っていた。

うちには出入り自由な猫で、庭先で小声で「みゃ」

と鳴けば誰かが戸を開けてやった。

 意外なほど重く押し付けてくる足取りの感触を楽しむ。そして

私は起きる気配も見せず、お互いに無干渉で

静かなときの流れを過ごす。彼の重さは私の傍らの

くぼ地にまるであつらえた様にある。

 彼は決して傍若無人な振る舞いをする猫ではなくて

私の汚い机の上を引っ掻き回したり、同室の弟の布団の上を

荒らしたりは決してしなかったが、私の布団の上だけは

自分のテリトリーと心得ていた。

 だから私は、起きたくなるとそっと布団から抜け出る。

私の抜け殻の脇の窪みに彼は丸くなって寝ている。

お団子のような丸い短い尾が彼のチャームポイントだ。

 

 居間で何するとも無く居たある日、戸の外で「にゃ」と聞えた。

少し開けてやればいつもの様に上がってくる。

晩年の彼はその鳴き声も小さくなったが、その毛並みは

つやつやときれいだった。

 普段かまってやらない私の傍は、べとべととはかまわれたくない

孤高で寂しがり屋の彼には居心地がよかったのかもしれない。

私は時々そんな彼のしっぽをいたずらする。

お団子の真ん中を指で押してやると、しっぽの中に丸まった

しっぽの芯に触れる。長くなり損ねたそれは

何をしてる

とでも言うようにするっと力強く逃げる。

外からは丸くて、振っているところなど見たことのない

短いしっぽだがちゃんと振るときは振っているのだ。

だからしっぽ以外身じろぎもしない彼の機嫌を損ねないように、    

私は2、3回それを繰り返して満足する。

そんな時彼は無関心を装って私のささやかないたずらを

見逃してくれた。

 

 今でも町角でトラ猫を見るとしっぽが丸くないか確かめてしまう。

そしてあのしっぽの芯を振る感触を懐かしく思い出す。

 


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