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「ミーハー」

 私は知る人ぞ知る森高千里ファンである。私がそう言うと殆どの人はあゝあの太ももがと言われることが多い。そんな時は適当に笑って違うよということにしている。

 音楽好きな人なら大体知っている”オリコン”という音楽情報雑誌、今は”イチバン”という名前に変わったその雑誌の最終ページに昔、アイドルと一緒というコーナーがあった。読者がアイドルと一緒に撮った写真を投稿し、それにそのアイドルがコメントを寄せるというページである。私が初めて森高千里というタレントを意識したのは、そのコーナーに載った彼女のコメントを読んだ時だった。まだ歌手デビューする前だったと思う。そこには”あなたの為だけに撮った写真なのよ・・・"のような意味のコメントが添えられていた。その意味をどう取るかは人それぞれ、何か媚びるようないやらしさを感じる人も居るかもしれない。けれど私はそこに彼女の茶目っ気とサービス精神を感じ、森高千里というタレントの名前を気にするようになったのである。

 話はガラっと変わる。これもその当時、TVK(テレビ神奈川)の放送終了間近に"歌う天気予報"というミニ番組があった。BGVにプロモーションビデオを流しながら天気予報のテロップが流れるというスタイルで、関東各地の天気の終了と共にBGVは必ずフェードアウトしていく。だから最初から見ないとそのプロモーションビデオが誰なのか解らないのだが、なぜか必ず私がチャンネルを回すと既に始まっているパターンが多かった。はっと気付いて回すのだが、ちょうど頭が切れる。そんなある日、とても気になるフレーズの曲に変わっているのに気付いた。画面を見るとぽっちゃりした女の子が唄っている。ぶっきらぼうに歌うその曲の気に入った私は絶対にレコードを買ってやる、と歌手とタイトルを知るべく”歌う天気予報"の始まりを待って毎夜テレビの前に構えて居るのだが、番組の始まる時間が悪かったのかどうしてもタイトルを知ることが出来ずにいた。

 特に買う目的も無くレコード店に寄り、棚を隅から片っ端しに見て気になったレコードがあると買ってみる、という癖が私にはある。森高千里が5月25日にデビューするという小さな告知をやはりオリコンで知った私は、レコード店に寄るたびに探していたが、特に話題もない無名新人のデビューレコードなど見掛けることはなかった。そんな或る日ふと駅前の小さなレコード屋に寄ってみると、ま行の棚に森高千里のシングル盤を見つけた。そのジャケット"NEW SEASON”を見た時私は彼女のファンになることに決めた。別に決めることではないがそんな気になった。なぜならそこにはあの"歌う天気予報"で唄っていたぽっちゃりした女の子の顔がすましていた。気に入った曲が気になっていた森高千里のデビュー曲だということが自然私の気持ちを引き寄せた。見ればふっくらした顔もかわいい。ポカリスエットのイメージガールとして、CMで糸井重里氏と共演していた時には全然気に止まらなかったのが不思議なものである。この頃はシングルはレコードであったが、アルバムはCDに切り替わった過渡期であった。そしてファーストアルバム”NEW SEASON”のCDは、いくら聴いても擦り減らないゆえ私の愛聴盤になった。

 シングルがCDになっても森高千里はなかなかブレイクしなかったが、コンスタントに曲を出していた。ファン心理とは不思議なもので、売れてくれるよう願いながら、ビッグになると遠くへ行ってしまったような寂しさを感じるものだ。けれどそこそこ人気のある彼女は、しばらくそんなファン心理を満足させてくれた。そして遂にみんなの知るミニスカート姿の「17才」を歌ってメジャーへの道を駆け上っていく。後は御存じの通りなのだが、最近、歳相応の”イイ女”になったと感じる彼女の姿をテレビで見ると、デビュー当時のあのぽっちゃりさが不思議な感じにふとよぎったりする。投稿した彼もこんな風になるとは思わなかっただろうし、タレントと自分だけのこんな些細で意味も無いエピソードがなんとなく嬉しかったりする自分は、ほんとミーハーなんだなと楽しい限り、ミーハー冥利である。


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