平成18年12月議会 12月18日   県民企業常任委員会】


               私学補助金について
 

小川委員


 私立高等学校における必履修科目の未履修に関連して、私学の補助金について伺いたいと思います。

 いろいろ調べているうちに、面白いホームページを見つけましたので、それに基づいて伺いたいと思います。私学の補助金については年間で500億円近く支出しているわけですが、その周知についても一生懸命やられていると思います。私は地元で県政報告会などをするときに、どれぐらいの私学の補助金が県内の私立学校に支出されているかというお話をよくさせていただくのですが、それを初めて聞いたというような反応をする県民の方が非常に多いです。お孫さんやお子さんを幼稚園に通わせている方でもほとんど知らないという実態です。こういうことで私たちは働いている、増額するように頑張っているということをお話しして初めて理解していただけるという状況です。そういう知らない方が多い中で、県から補助金が出ていますが、例えば、大阪府のホームページでは、幼稚園から高校、専修学校も含めてすべての学校についてホームページ上で補助額をきちんと載せています。そういうやり方というのも一つの方法かなと思います。ほかの自治体でそういうことをやっているのは珍しいのですが、なかなか周知できない中で一生懸命努力しています。そうした周知するいろいろなやり方があると思うんですが、県では今どういうことをやっているんですか。


学事振興課長


 県の私学助成について、どういう形で県民の皆様、特に中学へ通われている生徒や保護者の方にしっかりと周知していくということは、大切なことだと考えております。毎年、私立学校に通う児童・生徒、保護者の皆様に向けて、チラシを13万4,000部作成しまして、各私学、そして生徒へ配布をしていただいております。内容といたしましては、約500億円という県の税金を使わせていただきながら私学助成をやっているといったことでございます。特に学費補助など直接生徒に利用していただくものにつきましても、対象の生徒全員、あるいは公立中学校の先生方に周知をさせていただいているところでございます。また、県のたより等も活用もさせていただいておりますし、新しい試みとしては各高等学校の募集案内のホームページから、私ども学事振興課のホームページへリンクを張っていただいて、そこで学費補助制度について周知させていただくことも行っております。その他様々な会合で私学助成についてお話しさせていただく機会がございますので、鋭意その点については周知に努めさせていただているといった状況でございます。


小川委員


 私たちも議員生活をしていて選挙を控えてくると、チラシを作成したり、様々なPRをしていますが、それでもなかなか選挙に行っていただけないですし、自分が100%得票できるわけではありません。13万4,000部というのはかなりの量ではございますが、それだけで本当に足りているのか、それから、費用対効果がどうなのかということを考えますと、私の地元でいろいろお話を伺った様子では、もっと効率のよいやり方も必要なのではないかと思うんです。

 幼稚園の設置基準を緩和していただくときに、幼稚園関係のいろいろなホームページを見させていただきましたが、地域によっては、県からの補助金をいただいているのでこういうことになっているときっちり明示している幼稚園協会もありますし、全く触れていないところもあります。各幼稚園のホームページを見ても、そういうことを触れていない幼稚園が多いように思います。幼稚園協会の役職をやっているような方の幼稚園はきちっと書いてありますが、そうではないところは全く触れていない状況です。そういうことを見ますと、我々の努力というものが県民に広く知れわたる機会をできるだけとらえて、より強く広報していただくことが必要ではないかなと思います。県のホームページに載せることも一つの方法ですし、各幼稚園協会と協力して、また各幼稚園のホームページにも載せていただくように指導したり、また募集要項などに載せていただくというのも必要な努力ではないかなと思います。それはお金も掛かりませんので、そのように効率よくやっていただくことを検討していただきたいと思います。

 補助金のことをいろいろ調べておりましたら、今のようなことにも気付いたわけですが、今までの質疑の中でも未履修が判明した学校については補助金の削減について検討しているというようなお話もありました。この補助金の一部不交付という点に絞って、いろいろ疑問もありますので伺いたいと思いますが、毎年、予算額と決算額の差額が経常費補助金の中にも出ております。この中で一部不交付がどのぐらいなのかということを調べていただきましたところ、様々な要件があり、補助金の補正項目も様々あるということが少し分かったわけですが、確認の意味で伺います。補助金の補正項目をつくって不交付を検討する目的、そしてその項目、意味合いについてお答えいただきたいと思います。


学事振興課長


 経常費補助金、これは私立学校の教育条件の維持向上、就学上の経済的負担の軽減、私立学校の経営の健全性を高めるといった目的をもって助成するものです。そうした目的の中で残念ながら目的に沿わない事案が判明した場合に、不交付という措置をとらせていただいております。考え方としては、大きな意味で言えば私立学校というのが公教育を担っていただいており、公益法人として税制上の優遇措置を受けたり、あるいは私学助成といったことも受けたりしておりますので、国民、県民に対していわば社会的な責務を有しているということになります。その社会的な責任をより果たすという意味合いで、不交付という考えがございます。また直接的には補助金の不正利用を防ぐとか、あるいは事案によっては私立学校全体の中での均衡といったことも不交付の意味合いとしてはございます。その項目といたしましては、法令や学校法人の定款である寄附行為の違反、それから紛争等によって学校の運営に支障が生じた場合、私学の社会的信用を失墜する行為があった場合、あるいは学校の管理運営、財務の運営の中で不適切な事例があった場合に、原則として経常費補助金の一部を不交付とする形でやっているものでございます。


小川委員


 一部不交付の「一部」というのは、5%ということでよろしいでしょうか。


学事振興課長


 第一段階、いわゆる不交付事由が発覚したときということで5%、さらに継続いたしまして、私どもの改善指導に従わなかった場合には10%、15%というような形で定めております。

 なお、事案の重大性等も加味した上で考えております。


小川委員


 当初5%で、内容によっていろいろパーセンテージを上げていくというお話でございましたが、御答弁の中に私学の経営者の重要性というのがよく表れていたと思います。もし直近でこういう形のペナルティーによる一部不交付があったとしたら、件数と金額がどのぐらいだったのか教えていただけますか。


学事振興課長


 平成16年度には、ペナルティーによる不交付というのが18件ありまして、金額は約3,000万円でございます。その前年の平成15年度は16件で約5,600万円といった状況でございます。


小川委員


 日常の補正係数による減というのもあると思います。これは設置基準に抵触しているとか設置基準より上回っているといったことだと思いますが、そういう補正項目についても御説明いただきたいと思います。


学事振興課長


 この補正項目という考え方は、今申し上げました一部不交付という考え方ではなくて、全体として例えば補助金の算定に当たって教員一人当たりの生徒数が高いか低いか、あるいは定員の超過状況、それから納付金額の高低などに基づくものです。例えば、納付金額の高低であれば、高校の平均の納付金額よりも高い場合にマイナスの補正、それよりも低い場合にプラスの補正というような形で、私学全体のバランスを見ながら経常費補助の目的である就学上の経済的負担の軽減ですとか、経営の安定化、そういったものを実現するために私学全体のバランスをとっているといった状況でございます。


小川委員


 川崎市や横浜市の一部の幼稚園のように、定員を大きく上回って園児をとっているような場合は、この補正係数はどうなるのでしょうか。


学事振興課長


 定員超過の場合にはマイナスの補正という形になります。


小川委員


 上限を撤廃して、定員をはるかにオーバーして園児をとっていただいており、利用者からは有り難いと思われていても、定員オーバーしたらその分はマイナスになるのでしょうか。


学事振興課長


 こういった経常費補助金の構造がありましたので、私どもといたしましては、定員超過の上限の撤廃とそれに見合った形での施設設備の中での定員という定めをしてきているといった状況でございます。


小川委員


 それでも川崎市などは土地の問題もあって、園地の2分の1まで借地でもいいということで、設置基準をかなり緩和していただきました。しかし、上限定員をこれ以上多くできないという中で、マイナス補正をされながら子供たちをできるたけ入園させてきたという事情はあるわけです。こういう補正係数、補正項目によるプラス、マイナスというのは、年間の予算、決算の中では金額は出てこないのですか。


学事振興課長


 補正係数、補正項目の考え方は、例えば定員超過状況であれば、その定員を超えているものがマイナスですが、教員一人当たりの生徒数については平均人数未満ということでプラスに補正をしております。なおかつ納付金額の高低も平均値より高い場合にはマイナスの補正、低い場合にはプラスの補正という形をとっておりますので、全体としてはプラス−マイナスゼロに落ち着くような形で補正させていただいているといった状況でございます。


小川委員


 予算や決算の中では、それは見えない形で平準化されているということになっているのですか。


学事振興課長


 経常費補助金の予算の中にこの制度をプラス、あるいはマイナスとして組み込ませていただいているということでございます。


小川委員


 そのように、補助金については均衡が保たれるようにいろいろと工夫されている中で、先ほども伺ったように、ペナルティーという形で、年間で5,000万円とか3,000万円が不交付になっていると思います。ほかにも不交付になっている部分があると思いますので、それについて伺います。


学事振興課長


 高額給与での不交付という整理をしております。これは私立学校の教職員の給与が、標準的運営費方式をとっている公立学校の給与との比較の中で、合理性を超えて高いという部分について一部不交付とさせていただいているものです。ただ、これにつきましては、学校法人でございますので、教職員の給与の決定権は学校法人の理事会にあるものです。ですから、そういった意味ではこれはペナルティーということではなくて、一般的に標準的運営費方式をとっている中での教職員人件費の交付の仕方に対する補正というふうに考えております。


小川委員


 御答弁の内容は分かりましたが、公教育を担っている公益法人であり、社会的責務もかなりあるという中で、合理性から考えて高額であるという給与に対して削減しているものだと思います。その削減している金額も3,000万円とか4,000万円近くになる場合もあり、私学に通う子供たちが、授業料が払えなくてやめていく中で、補助金を増額してほしいとか、学費を補助してほしいというお声がある中で、私学の自由があるにしても、高額給与によるものというのはどうなのかなという疑問を感じています。

 次に移りますが、今回の未履修が判明した学校の場合は検討しているとおっしゃいましたが、昨日だったでしょうか、国から公立高校への厳しい通達というのが新聞報道されていました。東京都については、何も問わないとか補習を求めないといった教育委員会の方針が出たためかもしれませんが、過去の歴代の校長にもさかのぼって処分がなされるというような通達だと新聞に出ておりました。こういう国の動きがある以上、私学に対しても同等の指導があるのではないかと思っておりますが、その辺はどうでしょうか。


学事振興課長


 指導という面でいきますと、今回の事案が判明したところで、私どもといたしましては、これまでの経緯等をお聞きする中で、改善と注意喚起をお願いしているという状況でございますし、また特に今求められておりますのは、補習計画を立て、補習を行い、そして卒業や進学、就職に影響を及ぼさないようにすること、これが第一だと考えております。そこの部分につきましては、私どもの方で指導、助言、また国との調整について、鋭意努めさせていただいているという状況でございます。


小川委員


 私学が社会に与えた影響が大きいということで、当初、ペナルティーも考えているという学事振興課長の御意見が新聞にも大きく取り上げられたわけですが、その後の経緯で様々なお考えがあろうかと思います。私学の自主性というのが損なわれる、裁量が狭まると私立高校側は口をそろえておっしゃいますが、私学の自主性が単に受験競争に生き残るための自主性だとしたら、こんなに寂しい私学教育はないと私は感じています。その辺について、いかがでしょうか。


学事振興課長


 今回の未履修に至った経緯というのが、各私学が教育活動をどのように展開していくかというところにあろうかと思います。ただ、その部分にはすべて受験が関係していると言うのは、なかなか難しいのかなと思います。教科を教えるということを現在の学習指導要領で言うところの履修時間というふうには考えないで、様々な活動の中でそれを生かしていくというのも、総合的な人間形成という建学の考え方につながる部分もあろうかと思います。ただ、今回の場合は現在の学習指導要領の中で私学の特色ある教育活動がどこまで認められるのかという点についての全体としてのコンセンサスあるいは議論、そういったものが定着していなかったということもあろうかと思っております。


小川委員


 私学の議論が深まってなかったというのも分かりますが、私学に対する補助金についても憲法違反ではないのかという議論も一方ではあるわけです。そういう中で独自性を高めるために公教育を担っていただいているということで、補助金も出していると思います。こういう機会に私学の教育、私学の自主性というものはどういうものなのかということを、国だけでなく県のすべて私学経営者の方も自問自答していただきたいですし、学事振興課の方でもきちんと整理していただきたいと思います。

 県立高校の在り方についても、生きる力を身に付ける、受験だけが教育ではないという流れになっています。社会自体も、一流大学を出たからといって、就職や終身雇用が保証されているわけではありません。自分自身がしっかりと生きる力を付けていかなければいけないという流れになっている中で、私学が相変わらず受験一辺倒という感覚で、こういう問題が起きたのであれば、私学発祥の地と言われている神奈川の私学の質が本当の意味でどうなのかと思ってしまいます。すべての私学がそうではないと思いますし、独自性を十分に出して立派な教育をされている私学もあるとは思いますが、今回の状況を見て、何か非常に寂しい気持ちがしました。

 この問題に関連してお話ししたいことがあります。今回の未履修の問題で、私立高校の校長や学校の理事長が、自分が関係した学校でこういうことが発覚したということで秋の叙勲を辞退したという例があります。東京、鳥取、岩手などであったようですが、教育者としてそのぐらい重要なことだと自覚したから辞退したということだと思います。経営者としてはこういう自覚は非常に大事なことだと思いますが、今回未履修が判明した桐光学園高等学校は、影響を受ける3年生の数が、突出して多いです。また、単位も非常に多岐にわたっています。私学教育の一番の基本、これは公立であっても同じですが、社会の規範を教えるということだと思います。社会の一員として規則を守り、大人としてきちんと生活していくということを教えるという立場からすれば、規則を破ったというのは、非常に大きな社会的影響があると思います。これだけ多くの未履修の生徒を排出した桐光学園の理事長は、規則を守るため、守らせるために設置された県の公安委員会委員長を今なさっているわけです。私はただ意見として申し上げますが、叙勲を辞退した方もいらっしゃるぐらいですから、公安委員長という責務の重さを考えて委員長を辞退されるといったことも一つの見識の表れではないかと思います。こういう御意見もあろうというふうに思っておりまして、ただ私の感想として述べるところですが、今回の問題は、私学発祥の地と言われている神奈川県においては、大きな痛手ではないか、県民に与える影響というのは非常に大きいのではないかと思っております。私学教育の在り方、実践の問題も含めて補助金を増額していくということは、公教育を担っていただいている限りは賛成ですが、この問題に関しては厳しい姿勢で臨むべきだと私は考えております。その辺についてはいかがですか。


学事振興課長


 今回の未履修の問題について、私どもといたしましては、これから学校側からこれに至った経緯や考え方、それから来年度以降の対応も含めて、きちんとした形で御報告をいただきたいと考えています。ただ、背景として先ほど申し上げましたように、私立学校法に基づく私学の特色ある教育活動といったものと現行の学習指導要領との問題はあると思いますので、そこも押さえながらきっちりと見てまいりたいというふうに考えております。


小川委員


 ペナルティーとして補助金の削減をしなければきちっとしないというのも、教育の分野においては寂しいと思っておりまして、私学の教育者である限りは、ペナルティーがなくてもきちっとした形で規則を守っていただくようにしなければ教育者と言えないのではないかと思います。そういう教育者の姿勢という意味で、これから県としても議論を深める必要があろうと考えておりますので、きちっとした御指導ができるよう学事振興課でも研さんを積んでいただきたいと要望いたしまして、私の質問を終わります。