初めて顔を合わす指導員に教わった。ちょっと重そうな体型の先生。バイクの操作がものすごく上手い。CB750を軽々と、いかにもパワーを十分に引き出して操っている。アクセルを大きく吹かし、ごく短い距離で向きを変えて私の方へ来た時、この指導員上手いんだ、と直感した。
「急制動はどうやりますか?」
と尋ねられた。
「前7、後3ぐらいの割合で、同時にかけます。前は最後まで絞るように・・・。」
市販されているテキストどおりに回答する。
「なぜ前ブレーキを7にするのですか?」
更に聞かれる。
「前輪に荷重がかかっているから、それを止めるためで、後はあまり関係なくて・・・。」
しどろもどろになる。小学生か、私は?
「そうですね。荷重が前にかかるからです。」
凄腕の指導員、説明の仕方が、いかにも先生という感じ。
止められないと思ったら、無理しなくていいです、と言われたので、額面どおり受け取って、一度、止めるのを断念した。
「優先道路に入って行ったらダメです。もう2段階なのに・・・。」
怒られた。ダメだと思ったら、やめていいって言ったくせに〜、と思ったが、素直に謝った。よく考えると、やめていい、というのは「転倒する危険は回避せよ」という意味である。まずいなあ。この一件で、指導員にはかなり悪い印象を持たれたような気がした。
教習後、小型バイクに乗っているという、私よりやや年上に見える女性と少し話した。普通二輪(つまり小型限定解除)、大型二輪と連続して教習を受けているという。まだ基準時間を1時間もオーバーしていないそうだ。
「ああ、あの先生ね、すごいよね。」
とその人も言う。
「私ね、先生に教わった後は、とっても上達したような気がします、って言っちゃった。」
素直な台詞でコミュニケーションをきちんと取れる人なんだな、と感心してしまった。私の場合はその辺、問題ありという気がした。コミュニケーション不全が、技能の習得を妨げている可能性、無きにしも非ず。
それにしても、あの先生は、誰が見ても上手いんだな。カリスマ講師、といったところか。