3.3. 自分で止めるんだ

またしても初めての指導員に当たる。かなり怖い印象の指導員で、言葉もキツかった。

「誰かの後ろに乗せてもらって、止めてもらうんじゃなくて、自分で止める。」

そう言われて、グサっときた。自分の中の一番イヤな部分を見透かされた気がした。GSのことが頭をよぎる。

「前と後ろのブレーキは、7対3とか言う人いるんだけど、おれ、わかんないからさ。」

指導員がちょっとすごむように言う。

「リアブレーキは、”1”だ。」

こっちが市販の参考書なんか読んで、知識だけ詰め込んでくるのはお見通しというわけか。しかし、この人、迫力がある。班長と呼ばせていただこう。

「急制動の前ブレーキは最後まで絞る。途中で手を抜かない。」

「後ろ、ロックしそうになったんなら、どうしてゆるめない?」

きつい口調の後、班長は歯が1本欠けた顔でニッと微笑む。正直言って、とっても怖い。

急ブレーキで転倒してしまった。さすがにこれは初めてだ。動揺しそうになったが、班長にはナメられたくない気がして、まるで何事でも無いかのように、無言でさっさと引き起こした。近くにいた別の指導員が、すごーい、と誉めてるんだか、からかってるんだかわからないことを言う。

そんな努力の甲斐あって、最後には、完璧!と思ったのだが、班長の言葉は

「これだけラインより前でちゃんと止まれるのに、どうしていつもしないの!?」

・・・うまくできたのに怒られてしまった。

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