3.4. シミュレータ

シミュレータ教習は、20代前半くらいの、見るからに元気そうな女の子と二人だった。彼女はカワサキのTR250に乗っているという。

今回の指導員には、右左折の特訓(?)をしてもらったことがあった。でも、うまくできなかった。どの程度車体を傾ければ適切なのか、あるいはハンドルをどこまで切れるのか、感覚がつかめないのだ。

「曲がれっ!」

「行けっ!」

「自分を信じて!」

昔気質の鬼コーチという雰囲気だったが、私には好ましかった。

鬼コーチは、入室するなり、何かうれしそうなそぶりを見せた。彼女の教習原簿を見て、本籍地が釧路であることを発見し、さらににこやかになる。

「家族で北海道旅行に行くんですよ。4日間運転しっぱなしですよ。」

うふふ、と笑っている。

「では、しっかり見ていただいて。あまり集中しすぎると、目が寄ってしまいます。片山右京みたい。」

顔マネまでしてくれる。

シミュレータのシートにまたがり、(ライダーの)ならし運転をする。はい、左折してください、と言われて、シートを思いっきり寝かせた。シミュレータなら転倒しないから思い切って寝かせられる、と思ったのだ。しかし、ハンドルで曲がってください、という鬼コーチのコメントと、もう一人の教習生の笑いが飛んできた。

シミュレータはなかなか難しかった。私ももう一人の教習生も、うまく操作ができないので、設定をATに変更してもらったが、事故を連発していた。

ずっと画面見ていると、酔ってしまいそうだったので、鬼コーチに言うと、トイレはあっちですよ、ここではやめてね、と言われてしまった。

「次回はかなり体力的にきついことをやります。男でも、ひと夏に二人ぐらいは途中でギブアップします。脱水しないように、水分ちゃんと取ってね。」

意表をついて和やかな雰囲気の中、教習は終了した。

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