5.7.     キャンセル待ち

その日は土曜日で、朝から二輪の卒検が行われるため、私は朝イチで教習所に行き、午後遅い時間帯でキャンセル待ちの申し込みをした後、土手に座って他の人の受ける検定を見ることにした。

卒検中であっても、普通の教習は行われる。課題走行のエリアを眺めていると、波状路を立ち姿勢で通過し終えた指導員が、派手なデモンストレーションを始めた。

バンパーがぎりぎり路面につかないところまで車体を寝かせた見事なスラローム、フルロックターン、フロントアップ・・・この人も、ものすごく上手かったんだ。最後に「どうぞ。」と土手からでもはっきり聞き取れる声で教習生を課題走行のエリアから出し、自分が最後尾について交差点で信号を待つ。その間にスタンディングスティル。

実は私はこの技術をつい最近まで誤解していた。交差点等で自分の前に大きな車両がいて見通しが悪い時、信号を見るためにステップ上に立ち上がるのだとばかり思っていた。そうではなくて、オフロード走行で使うテクニックなのだ。

そうこうするうちに、暑さで頭がクラクラしてきたので、いったん退散することにした。キャンセル待ちは、夕方に固めてある。9月とはいえ、猛暑もいいとこで、こんな炎天下で教習を受けるのは自殺行為に思えたのだ。

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