4.  事故

4.1. 法規走行の練習

見極めが出たその日のうちに、卒業検定を予約したが、1週間以上先の日曜日ということになってしまった。間が空きすぎる。卒検まで、せめて路上で法規走行の練習をたくさんしよう。そう思い、翌日の夕方、自分のバイクで会社の方に走りに行ってみた。

知らずに出発してしまったのだが、その日は近隣の花火大会の日で、幹線道路は大変な渋滞になっていた。すり抜けすり抜けして、ようやく会社の前を通り過ぎた頃だった。

すり抜け中の私の真横にいた乗用車のドアが突然開いた。次の瞬間、ドアが右手とハンドルに当たる。え?と思うまもなく、バイクが左に大きく傾いた。

気が付いたら、バイクは縁石に叩きつけられ、私はその間に左足を挟まれていた。必死で脱出しようとしたが、足が抜けない。抜けない!と思わず叫ぶと、乗用車から出てきた女性が、大丈夫ですかといいながら、バイクのエンジンに手を伸ばした。

「触っちゃダメです。」

女性を押しとどめ、やっとのことでバイクから足を引っ張り出す。立ち上がって、全身を探ってみたが、どこも折れていない。よかった。右手がズキズキと痛むので、グローブを外して見るとなぜか爪の下に血マメができていた。

修理代をここでお払いして済ませられるんでしたら、と言う女性と、老人を待たせているので行かせて欲しいと言う運転者を必死で引き止め、警察を呼んだ。

交通事故になってしまった。卒検受けられなくなるんだろうか。不安な気持ちで実地検分と事情聴取を受けていると、突然、どどーん、と音がして、目の前の空に派手な花火があがった。すごく情けない気分だった。

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