5. 卒業検定
5.1. 土手に座るウォッチャー
卒検の前日は土曜日で、この日も朝から卒検が行われる。イメージトレーニングの延長として、見学に行ってみた。かなり早めに行ったので、検定の準備段階から見ることができた。検定員と思われる指導員が、走り回っていた。
「あっち、ガス入ってないんだ。次長はまだ来ないのかな。外のガススタ、まだ開かないよ。」
準備もなかなか大変そうである。
いよいよ検定が始まった。「検定中」と書かれたゼッケンをつけて、普通二輪や大型二輪が走りだす。土手に座って、課題走行のエリア近くを見下ろしていたら、伴走する検定員が私を見て微笑んだ。チャーリーだった。しばらく顔を合わせていなかったが、覚えていてくれたのだろうか。実はこのチャーリーが、ある意味でこのお話に決着をつけることになるのだが、この時点では、そんなことは全くわからない。
この日の検定は、「コース1」で行われた。となると、明日はコース2かな、とヤマをはってみる。
見学した限りでは、検定中止になるケースはなかった。みんな上手いんだな、と感心してしまうが、よく考えると当たり前の受検レベルだ。