パラグアイの言い伝え

カアクペのマリア

 カアクペの森に、インディオのホセという若者が住んでいました。ホセは、修行を積んだ優秀な彫刻家で、朝夕マリア様に感謝の祈りを捧げ、正直にくらしていました。
 ある日のことホセは狩りに出かけました。ころころと太った野豚を見つけたホセは夢中になって追いかけているうちに、いつの間にかとなりの部落の土地に入り込んでいたのです。その部落とホセの部落は、いつも争いごとのたえない仲の悪い部族でした。
 ようやく野豚を捕まえた時、運悪くその部族のものに見つかってしまいました。
「俺達の土地のえものをぬすんでいくやつがいる。捕まえろ!」
 と彼らは手に手にやりや弓矢を持って、追いかけてきたので、ホセは必死になってにげました。捕らえられると殺されるかもしれません。ようやくカアクペの森のふもとまで逃げてきたホセは、もうくたくたで一歩も歩ける状態ではありませんでした。ホセは小さな岩を見つけるとそのに身をひそませ、マリア様に必死で祈りました。
 「マリア様。お助けください。もし、わたしが助かりましたら、パラグアイ川にある一番固い木で、あなたの像をほってさしあげます。」
 不思議なことに、本当に小さな岩かげだったのに、その目の前を彼らは通り過ぎて行ってしまったのです。奇跡が起こりホセの姿は透明になっていたのでした。
 助かったホセはマリア様との約束どおり、固い木でマリア像を心をこめて彫り上げ、今まで以上に朝夕マリア様に感謝の祈りを捧げました。
 ホセの話はいつか人々の間に広まって、マリア像は礼拝堂に祭られるようになりました。ここに歩いてきてお参りすると、願いごとがかなうという・・・そんなうわさもも広まっていきました。
 マリア像のお参りに、人々は遠くから歩いてくるようになりました。町はだんだん大きくなり、今のカアクペの町ができたころ、礼拝堂も大きな教会になりました。
 12月8日のカアクペのお祭りには、パラグアイ中から大勢の人々が歩いて集まってくるのです。
                     (イグアス日本語学校テキストより引用)





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