パラグアイの言い伝え

マテ茶の話

 昔、月の神と雲の神がいました。二人はとても仲良しで、時々空から地上に降りてきて、森の中で遊ぶのが好きでした。
 森には、きれいな花が咲き乱れ、大きな木々が涼しい木陰をつくり、清らかな水をたたえた美しい湖もありました。二人が地上にいる時は、女の子に姿をかえ、花輪をつくったり、木の陰で語り合ったり、水浴びをしたりして楽しく遊んでいました。
 ある日、いつものように女の子の姿で森の中にいた二人の目の前に、突然大きなトラが襲い掛かってきました。
 「キャー。たすけてー。」
と、二人は悲鳴をあげて逃げまどいました。幸いなことに、近くで猟をしていた猟師が、その声を聞いて駆けつけてきました。猟師は、自分が持っていた矢を、トラをめがけて打ち放ち、トラはばったり倒れて動かなくなりました。猟師が駆け寄ってきたところ、二人の姿は見えなくなっていました。
 「どこへ行ったのだろう。不思議だなあ。」
と思いながら、猟師は家に帰りました。
 その夜、猟師は夢を見ました。夢の中には二人の女の子がでてきました。
 「私たちは神さまです。今日、私たちを助けてくれたお礼にこの木をあげます。この木は『カア』の木と言います。病気の人にはとてもいい薬になります。」
 次の日、猟師はきのうの場所へ行きました。きのうの大きなトラの姿はなく、そこには小さな木が1本はえていました。『カア』の木です。
 猟師はその木を家へ持って帰り、その葉を皆に分けてあげました。おかげでみな病気をしないで、健康に暮らしたということです。
 この『カア』の木がマテ茶です。パラグアイではこのお茶をとても大事にしています。神様にいただいた木だからです。
                     (イグアス日本語学校テキストより引用)





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