パラグアイの言い伝え

ニヤン ドゥ ティ

 山奥の森の中にあったインディオの部落の話です。インディオの酋長の息子が、ある美しい娘と結婚することになりました。娘の父親は、酋長の息子にこう言いました。
 「娘のために、何か素晴らしいプレゼントをするように。」
 酋長の息子は、大好きな彼女のために、何か珍しいものを探してこようと思い森の奥へ奥へと出かけていきました。娘は彼の帰りを楽しみに待っていました。ところが、彼は何日たっても帰ってきませんでした。
 「もしかしたら明日は帰ってくる。」
 毎日、明日こそと思いながら待っていましたが、とうとう彼は帰ってきませんでした。心配のあまり、娘は彼を探しに行こうと決心し、一人で森の中に入って行くことにしました。周りの人は必死でとめましたが、娘の願いには勝てません。娘は危険な動物がいる森の中をあちこち探しまわりました。
 とうとう、彼を探しあてましたが、彼の姿はトラにかみ殺されて無残な姿に変わりはてていました。娘はそれから3日3晩、彼のそばで泣き暮らしました。涙も枯れたと思われるころ、枯れの死体のそばにあった木にふと目をやると、そこには美しい蜘蛛の巣がはられていました。太陽の光を浴びて、きらきらと銀色に輝くその蜘蛛の巣に娘は強く心を打たれました。娘は1匹の蜘蛛が自らはきだす細い糸で、網目模様をつくりあげていく動きをじーっと観察したのです。
 村へ戻ってきた彼女は、1匹の蜘蛛の動きを思い出しながら、すばらしい織物を作り上げました。それは蜘蛛の糸のように細く、蜘蛛の巣のように繊細で美しいものでした。それ以来、その織物は、蜘蛛の巣(ニャンドゥティ)と呼ばれるようになったそうです。その技術がインディオの女性たちに広まり、今ではパラグアイを代表する伝統的な織物として有名になりました。
                     (イグアス日本語学校テキストより引用)





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