6. 大型自動二輪免許

6.1.   二俣川

神奈川県の運転免許試験場は、その所在地から、通称「二俣川」と呼ばれる。連休明けの朝、私は会社へは行かず、出勤が遅くなる旨、二俣川から電話を入れた。

早く着きすぎたので、二輪の試験コースを歩いたり、待合室をのぞいたりしてみた。試験場のコースはなんと3つ。これを全部、しかも実際に走行せずに覚えるのは大変そうだ。

免許の申請が始まると、卒検の時に一緒だった背の高い女性がいた。彼女は、成績も良さそうだったし、いかにも規定時間内に取った、という雰囲気。まあ、結果は同じなのでひがむまい。

そんな心根を映してか、なんだか映画「リング」の貞子みたいな、すごい写真の免許証を受け取り、出勤した。ちょうど昼休み中で、同僚や課長に勢い込んでしゃべってしまう。

私「最後の練習では、担当じゃない指導員まで出てきて教えてくれたの。」
同僚1「教習所の二輪部長とか、そういう人が、コイツを卒業させなかったら、部内全員ボーナスカットだ、とか宣言してたんじゃないの。」

私「でね、卒業証明書もらった後、自由練習の費用返してくれたんだよ。」
同僚2「金はいいから、もう帰ってくれ、ってことですね。」

私「教習時間何時間オーバーしても、検定何回受けても料金一定のコースだったんです。」
課長「それは損益分岐点を完全に突破したね。」

私「70点ぎりぎりだけど、合格したんです。」
同僚3「卒業判定会議で、墓の中まで持ってかなきゃならん秘密を増やしたヤツがきっといるぜ。」

私「検定員の先生も、すごくうれしそうにしてくれたんですよ。」
同僚4「そりゃ、その日はきっと打ち上げなんですよ。」

ああ、卒検は受かったし、免許も取れたのに、なんだか悲しいのは何故!?と思い切り言うと、職場は爆笑に包まれた。

こうして、私の熱くて激しい夏は終わったのだった。

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