3.6. へなちょこの本気モード

どうにかこうにか第2段階も最終項目まできていた。この日もひたすら、コースを走った。踏切を通過し、一度も車両がいたことのない道路を越えて、優先道路に入ろうとすると、班長が追いついてきて引き止める。

「優先道路でしょう!そのまま入って行っちゃだめだ。」

確認して、徐行していたつもりなので、正直なところ、何を言われているのかわからない。

「見たの?見たと思っているだけでしょう。踏切を通過する前に、方向が同じだから優先道路も目に入るけど、それは確認したことにはならない。」

強い口調に気後れがする。

課題走行のエリアに入ろうとすると、エリア内でスラロームをしている人がいたので、ぶつからないよう、入り口で停止する。すると、また班長が飛んでくる。

「なぜ止まる?もうスラロームしている人はいないでしょう。情報が古いんだよ。入る直前に見なくちゃ。」

自分の中で緊張が高まっていくのがわかった。なんだかすごくきつい教習になっていた。

終了後、教習生の控え室がある2階で、帰り支度に手間取っていると、つるばらさーん、と階段を上がってきた班長から、教習原簿を渡される。もう最終項目を4時限もやってるけど、見極めなんて出るようなレベルにはとても達していない。ちょっとひねくれた気分になり、上達が遅いことへの言い訳代わりに、また1週間のお別れです、と捨て台詞を吐いてしまった。

「がんばって取ってよ、予約。」

班長のストレートな返事にハッとする。早く上手くなりたかったら、時間を空けずに教習を受ければいい。それだけの話だ。この指導員、いい人だな。私は大人気なく拗ねていたのに、いいことに気づかせてくれた。

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